監修 慶應義塾大学医学部 産婦人科学教室 准教授・婦人科診療副部長
阪埜 浩司 先生
初期の病変であれば、子宮を残すことが可能です
妊娠・出産を望む場合は、治療後も子宮を残しておく必要があります。初期の病変であれば、妊娠の可能性を残す治療法を選択できる場合があります。
子宮頸がんの治療法には手術療法、放射線治療、薬物療法があり、がんの状態に応じてそれぞれを単独や組み合わせて行います。
妊娠の可能性を残す手術を行った場合、子宮を残すことによって再発リスクが高まるため、治療法を決めるときには、主治医とよく相談して検討することが必要です。
子宮を残して治療するためには、前がん病変またはⅠA期、ⅠB1期の子宮頸がんで、病気の状態が一定の基準を満たしている必要があります。
前がん病変の場合、子宮頸部高度異形成または扁平上皮がんで、子宮頸部円錐切除術後の切り口のがん細胞が陰性であれば、子宮を残すことができます。
ⅠA期、ⅠB1期の子宮頸がんの場合は、がんのサイズが2cm以下、骨盤リンパ節転移なし、ⅠB1期で脈管侵襲なしなどの条件を満たせば、広汎子宮頸部摘出術によって子宮を残すことが可能です。
卵巣
子宮頸がんで行われる手術では、卵巣摘出は絶対条件ではありませんが、卵巣にがんが転移している可能性を考慮して慎重に判断する必要があります。卵巣を残した場合には、術後の管理をしっかり行うことが大切です。なお再発リスク因子がある場合は術後に放射線治療を行いますが、卵巣は放射線治療の影響を受けやすいため、手術前に卵巣を放射線の届かない場所に固定する処置を行います。
子宮
前がん病変の場合は、子宮頸部の一部を切除する子宮頸部円錐切除術を行い、切り口にがん細胞がいなければ治療完了となりますので、子宮をほぼそのまま保つことが可能です。
ⅠA・ⅠB期、Ⅱ期の場合は、血管やリンパ管へのがん細胞の広がりの有無、がんのサイズ、リンパ節転移の有無などの条件※を満たせば、広汎子宮頸部摘出術で子宮を残して手術を受けることが可能です。
広汎子宮頸部摘出術は、下図のとおり、がんのある子宮頸部の周囲を含めて大きく切除し、残った部分をつなぎ合わせる手術です。
※医療機関によって条件の詳細は異なります
日本婦人科腫瘍学会編:患者さんとご家族のための子宮頸がん子宮体がん卵巣がん治療ガイドライン 第3版,金原出版,2023,p.56
もしも妊娠中に子宮頸がんが見つかったら?
出産が可能な場合もあります。がんの進み具合や発見されたときの妊娠週数に合わせた管理方法、胎児および母体に対する厳重な経過観察が必要です。
※子宮頸部円錐切除術については、「子宮頸がんの手術内容」をご覧ください。
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CASE/01
『前がん病変(高度異形成)』
と診断されたとき自然に縮小することが多く、出産まで厳重に経過観察を行います。
経腟分娩が基本です。 -
CASE/02
『子宮頸部にとどまっていて、
肉眼的には見えないがん』
と診断されたとき子宮頸部円錐切除術※を行います。
問題がなければ、そのまま出産まで経過を観察します。経腟分娩も可能です。円錐切除術の後は流産・早産を起こしやすいので十分な注意が必要になります。 -
CASE/03
『がんが子宮頸部を超えて
広がっているがん(湿潤がん)』
が発見されたときがんに対する治療開始のタイミングと治療方法、出産するかどうかをご夫婦と担当医で十分に話し合って決めます。