肝がんの原因

監修:
武蔵野赤十字病院 院長 黒崎 雅之 先生
京都大学大学院医学研究科 肝胆膵・移植外科 教授 波多野 悦朗 先生

肝がんの原因

肝がんは、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスへの持続感染が主な原因であるとされています1)
それ以外の原因としては、MASLD(マッスルディー、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)やアルコール性の肝疾患があります。MASLDは糖尿病や高血圧、脂質異常症などによって引き起こされる慢性的な肝臓の病気で、お酒を飲まない人にも起こり得る病気です。アルコール関連肝疾患は、お酒の飲みすぎによって肝臓がダメージを受けることで起きる病気です。
その他に、アフラトキシンというかび毒も肝がんのリスク因子の一つであるとされています1)
1990年代〜2000年代前半は、B型肝炎やC型肝炎が原因となる肝がんが大きな割合を占めていました。しかし、治療の進歩や検査体制の整備によって、特にC型肝炎による肝がんは少しずつ減少してきています。一方で、お酒を飲まない人でも起こるMASLDや、アルコールの飲みすぎによる肝疾患を背景とした肝がんが増えてきています2)

図:国内の肝がん患者の背景疾患の経時的推移
1991~2015年の肝がん原因別推移として、B型・C型肝炎による肝がん、B型単独、C型単独、非ウイルス性肝がんの経時的変化を示したグラフ
  • <対象・方法>
    日本の34施設から2011年~2015年の間に、肝癌と診断された7,370例を対象に、背景疾患などをレトロスペクティブに調査した。また、過去の調査データ(1991年~2010年)と比較検討した。
    <研究の限界>
    本研究ではウイルス性肝炎患者に対する対照群の設定がないため、生活習慣に関連した危険因子の影響を推定することはできない。また、本研究は観察研究であるため、非ウイルス性肝細胞癌の増加と日本における肥満の有病率との因果関係を証明することはできない。

肝炎ウイルスの感染や、糖尿病などによるMASLD、お酒の飲みすぎなどから慢性肝炎となり、肝硬変を経て肝がんに至ることが多いとされていますが、肝硬変にならずに肝がんに移行する場合もあります。

図:肝炎からの自然経過
肝炎ウイルスや毒素、アルコールや代謝異常によって慢性肝炎となり、肝がんにいたる様子
  • MASLD:代謝機能障害関連脂肪性肝疾患
  • MASH:代謝機能障害関連脂肪肝炎

背景にある肝臓の病気や体質、生活習慣などによって、肝がんの発症リスクが高い人がいます。特に注意が必要な「高危険群」と呼ばれるのは、次のような方です3)

さらに、B型肝炎やC型肝炎を背景に肝硬変まで進んだ場合は、肝がんを発症するリスクがさらに高くなり、「超高危険群」とされています3)

高危険群 B型慢性肝炎、C型慢性肝炎、非ウイルス性の肝硬変
超高危険群 B型肝硬変、C型肝硬変

これらの背景がある方は、以下のような条件が重なることで、肝がんの発症リスクがさらに高まることが知られています4)

  • ALT・AFP高値
    血小板数低値
    ALT・AFP高値血小板数低値
  • 高齢者・男性、糖尿病罹患、肥満
    高齢者・男性、糖尿病罹患、肥満
  • アルコール多飲
    アルコール多飲

また、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど自覚症状の現れにくい臓器であるため、ほとんど自覚症状のないまま、肝炎から肝がんに移行していきます。

  1. 1) 国立がん研究センター:肝がんの原因・症状について
    https://www.ncc.go.jp/jp/information/knowledge/liver/001/index.html(別ウィンドウで開きます)
    (閲覧日:2025年11月10日)

  2. 2) Tateishi R, et al.: J Gastroenterol 2019; 54(4): 367-376.
    https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/(別ウィンドウで開きます)
    (閲覧日:2025年11月10日)

  3. 3) 日本肝臓学会 編:肝細胞癌診療ガイドライン2025年版, 金原出版. P31, 2025.

  4. 4) 日本肝臓学会 編:肝癌診療マニュアル 第5版, 医学書院. P14, 2025.

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