肺がんの治療

再発・転移

肺がんの再発と転移

治療によって目に見えるがんがなくなった後に、再びがんが現れることを「再発」と言います。
治療したところに再び現れる場合と、別の臓器に現れる場合があります。治療したところに再び現れることを「局所再発」、別の臓器に現れることを「転移」と言います。肺がんの再発の場合、転移が圧倒的に多く、再発全体の約8割を占めるといわれています。一方、治療によってがんが一度小さくなった後に、しばらくして大きくなったものを「再燃(さいねん)」と言います。
肺がんはがんの中でも再発しやすく、Ⅰ期(ステージⅠ)の非小細胞肺がんでも約20~30%の再発率といわれています1)。再発のほとんどは治療後2年以内に起こり、5年を過ぎるとかなり少なくなります2)

  1. 1)Taylor MD, et al.: Ann Thorac Surg. 93(6):1813-20, 2012.

  2. 2)NPO法人キャンサーネットジャパン:もっと知ってほしい肺がんのこと, 2017年6月

図:がんの再発・転移
がんが治療したところに再び現れる局所再発と、肺の原発がんが脳や骨、肝臓に転移した転移のイメージイラスト

肺がんは反対側の肺、脳、骨、肝臓、副腎、リンパ節などに転移しやすい

転移は、肺でできたがん細胞が血液やリンパ液の流れにのって、他の臓器に移動し増えるために起こります。肺にはたくさんの血管とリンパ管が張りめぐらされているため、がんが他の臓器に広がりやすいと考えられています。特に肺がんが転移しやすい場所は、反対側の肺、脳、骨、肝臓、副腎、リンパ節などです。

図:肺がんが転移しやすい場所

転移した臓器の自覚症状から再発が発見されることも

肺がんが転移した場合、転移した臓器による症状が現れます。例えば脳転移による頭痛や骨転移による痛みなどで、これらの症状から再発が発見されることもあります。

図:転移による主な症状

転移による主な症状は、脳に転移した場合は頭痛、吐き気、手足のまひ、めまいなどがあります。骨に転移した場合は痛みや骨折などがあります。肝臓に転移した場合は、疲労感・倦怠感、食欲不振、黄疸などがあります。副腎に転移した場合は、腹痛や背部痛などがあります。
このように転移した臓器によって現れる症状が異なります。

このページのTOP

再発したがんは薬物療法を中心とした全身療法が基本

肺がんの再発では、がんが他の臓器にも見られることが多いため、小細胞肺がん、非小細胞肺がんともに薬物療法を中心とした全身療法になります。
小細胞肺がんの場合は、最初の治療終了から再発までの期間の長さを参考に、適切な細胞傷害性抗がん剤や放射線療法、症状緩和のための治療などを選択します。非小細胞肺がんの場合は、組織型、遺伝子変異の有無、体の状態をみながら治療薬を選択します。

表:再発がんに対する治療
小細胞肺がん
  • 最初の治療終了から再発までの期間の長さを参考に、適切な細胞傷害性抗がん剤を選択
  • 放射線療法や症状緩和のための治療が行われることも
非小細胞肺がん
  • 組織型、遺伝子変異の有無、体の状態により治療薬(分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害剤、細胞傷害性抗がん剤)を選択
  • 再発した場所、再発病巣の個数などにより外科治療、放射線療法を行うことも

症状が見られる骨転移、脳転移は、その症状に対する治療を優先

転移による再発の中でも、骨や脳への転移は、その症状が日々の生活に大きな支障をきたすことがあります。
例えば骨へ転移した場合(骨転移)には、持続的な痛み、骨がもろくなることによる骨折が見られます。
脳へ転移した場合(脳転移)には、がんが大きくなり脳が腫れることによる手足のまひ、めまいなど神経症状が見られます。
これらの症状がなければ薬物療法を中心とした全身療法が行われますが、症状がある場合はそれを取り除くための治療が優先されます。

表:骨・脳転移に対する治療
骨転移
  • 痛みの緩和には鎮痛薬の服用、放射線療法を行う
  • 骨折の予防には骨粗しょう症治療薬を服用することも
  • 骨折の危険性が高い場合や神経が圧迫されている場合には外科治療を行うことも
脳転移
  • 転移巣の個数が少ない場合、病巣にピンポイントに照射する定位放射線治療や外科治療を行う
  • 転移巣の個数が多い場合、脳全体に照射する全脳照射を行う

再発の早期発見のためには、定期的な通院・検査を忘れずに

再発をできるだけ早く見つけるためには、治療が終わっても医師の指示どおりに通院し、定期的に検査を受けることが何よりも大切です。再発がほとんど見られなくなる5年間くらいは定期的に検査をし、再発をチェックします。定期検査の日でなくても、再発が疑われる症状が見られたら、受診するようにしてください。
日常生活においては、栄養バランスの良い食事、ウォーキングなどの適度な運動を心がけ、体力をつけるようにしましょう。

図:再発の早期発見に大切なこと
再発をできるだけ早く見つけるためには、治療後の定期的な通院と定期的な検査(血液検査、X線検査、CT検査など)が大切

参考文献
  • 日本肺癌学会編:患者さんのための肺がんガイドブック 2019年版. 金原出版. 2019
  • 渡辺俊一他監修:国立がん研究センターの肺がんの本. 小学館クリエイティブ. 2018
  • 坪井正博監修:肺がんの最新治療と予防&生活対策. 日東書院. 2016
  • Kubouchi Y. et al., Yonago Acta Med. 2017;60(4):213-219
  • Taylor MD, et al.: Ann Thorac Surg. 93(6):1813-20, 2012.
  • NPO法人キャンサーネットジャパン:もっと知ってほしい肺がんのこと, 2017年6月

このページのTOP