乳がんと心のケア乳がんと心のケア

リエゾンナース(精神看護専門看護師)
からのメッセージ
リエゾンナース(精神看護専門看護師)
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がんと診断されたあなたへ リエゾンナース(精神看護専門看護師)からのメッセージ

がんと診断されて、頭の中が真っ白になった、と言われる方は少なくありません。どうやって病院から家へ戻ったか覚えていない、という方もいらっしゃるかもしれません。「事故にあわずに帰ってこれたのが不思議です」と言われた患者さんもおられました。

そのあとも、今までの自分ではなくなってしまったように感じたり、こころが硬く閉ざされてしまったように感じているかもしれません。「そんなはずはない」「何かの間違いに違いない」と思ったり、あるいは「なったものは仕方ないので、治すしかない」、また「それが、どこか別人のことのように、淡々とうけとめられました」という感じ方をされた方もいらっしゃるかもしれません。日常は今までと同じように普通にしていても、どうしても悲しくて、ふとしたところで涙することがあるかもしれません。たとえば、食欲がなくなったり、夜眠れなかったり、めまいがしたり・・・体のあちこち、特に「乳がんがある」とわかった側の肩こりや腕のしびれ、息苦しさなどの体の不調を感じたりする方もおられます。

しかし、今、このような気持ちの動きや調子の変化に気が疲れるのは、とても当然のことだと思うのです。あなたが「がん」から逃げずに正面から向き合い、治療への一歩を心身ともに踏み出した、つまり治療のスタートラインにたったからこそ、さまざまな気持ちのゆらぎがあるのだと考えることができるからです。

また、心理学の観点からは、不安や怒り、悲しみなどの負の感情は、現実と向き合うために必要な感情です。不安は未来に備えるため、怒りは現在の課題を解決するため、悲しみは受け入れ難い出来事を受け止めるため、といったそれぞれの大切な役割があるのです。ですので、気持ちのゆらぎが生じている期間は、その方が次に前に進もうとするための準備をしている時間とも理解できます。

通常、このような気持ちのゆらぎは、2週間をめどに落ち着きを取り戻していくと言われています1)。人によってはこの期間は短かったり、また気持ちが元に戻ってしまったりするかもしれません。すこし辛い時期ですが、まず、2週間、ご自分のゆらぐ気持ちをそのままで自由にして、いつもと同じ日常を過ごすようにしましょう。

それでも、夜眠りの浅い日が2週間以上続いたり、気分が沈む、今まで楽しめていたことに興味がなくなったり、どうでもいいやという気分が強くなったりするときには、主治医や看護師にご相談ください。

  • 1)国立がん研究センターがん対策情報センター 編集・発行:がんと療養シリーズ
    「がんと心」,2012,p5

いくつかのメッセージ

自分を責めないでください

「なぜ、《がん》になんてなってしまったのだろう」がんになってしまった理由(原因)を探していませんか?「食事が悪かったのかしら」「運動不足?」あるいは「ストレスが・・・」「家系かしら」と考えておられるかもしれません。
しかし現在までに、がんになるメカニズムは学術的に明確にされていません。“あなた”や、あなたの“何か”が悪くてがんになったのではありません。
自分を責めないでください。このページを探して見ている(読んでいる)あなたはもうすでに治療のスタートラインに立っていることを意味します。今からこれを乗り越えていこうとしはじめている「あなた」は勇気のある存在だと私たちは思っています。

今までやってきたことを続けましょう

「何もなかった昨日に戻りたい・・・」と思っているかもしれません。自分が自分でなくなったような気がして、何をやっていいのかわからないと感じているかもしれません。《気持ちはここにあらず》であっても、身体だけはいつもの生活リズムに戻していってください。今までと同じように、時間になれば起きて、食事して、お仕事に行ったり、家事をしたり、出かけたりしてください。新たに何かするよりは、今までやってきたことを続ける方がやりやすいでしょう。あなたの今までやってきた日常生活が、乳がんを悪くしたり進行させたりすることはありません。

もう一度説明されたことを
思い起こしてみてください

病院で、医師や看護師から説明されたことを思い出してみましょう。あまりよく覚えていないかもしれません。説明された内容をもう一度誰かに話そうとすると、何だかちぐはぐになったりしていないでしょうか?あいまいな記憶や情報のままでは、不安な気持ちはなくならないかもしれません。
一度聞いただけで納得しようとせず、メモをとったり、信頼できる人に医師からの話を一緒に聞いてもらったりなどして、あなたが十分わかるまで説明を受けてください。治療という場面での主人公は、あなたです。

自分の信頼できる人に、
自分の気持ちを話してみましょう

「だれかに話すと心配をかけそうで・・・」「迷惑をかけたくないし・・・」と思っているかもしれません。信頼できる人に自分の気持ちを話す、ということは、話すことそのもので気持ちが軽くなるという効果もありますが、《話す》ことは《離す》ことにもつながります。話すことで少し距離ができる、つまり冷静になっていくきっかけにすることができるとも考えます。
話せる人に、話せるところからでかまいませんので、自分の気持ちを話してみましょう。
話された人は、アドバイスをしたり、頑張れと叱咤激励したりするのではなく、ただうなずきながら聞くだけで十分です。相談された方のために時間を作ってあげてください。

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このページの監修

早川 昌子

JCHO大阪病院 リエゾン精神看護専門看護師 公認心理師

略歴:
1999年 兵庫県立大学大学院看護学研究科(精神看護学)修了。
同年より関西労災病院でリエゾン精神看護専門看護師として、乳腺外科チーム、緩和ケアチームで活動。
以降、相原病院乳腺科、淀川キリスト教病院、JCHO大阪病院。
2020年 公認心理師。
乳腺外科ナーシングプラクティス(文光堂)編集。

清水 研 先生

がん研究会有明病院 腫瘍精神科 部長