おりものの異常

監修

近畿大学医学部 産科婦人科学教室 教授

松村 謙臣 先生

子宮・卵巣にまつわる症状

おりものの異常

おりものは帯下(たいげ)ともいい、女性器からの分泌物を指します。生理周期に合わせておりものの状態や量が変わることは一般によくありますが、何らかの婦人科系の病気があるときにも、おりものの量や性状、においが変わることがあります。
おりものの異常の多くは腟や子宮頸部の感染によるものですが、まれにがんなど重要な病気の症状であることもあります。
普段と違うように感じたら婦人科を受診し、異常の原因を確認することが大切です。

おりものの異常の症状

おりものの異常

いやなにおいがする、酒かす状、ヨーグルト状、膿状、量が多い、泡状、色がおかしい(黄緑色、灰色、茶褐色)など。
おりものの異常から考えられる病気は、下の表をご覧ください。

おりもの異常に伴う症状

かゆみ、熱い感じ、排尿痛、性交痛など。

おりものの異常 考えられる病気
茶褐色(不正出血) 子宮体がん、子宮頸がん
灰色で水っぽく大量 細菌性腟症
白く酒かす状またはヨーグルト状 カンジダ症
黄緑色の膿状で大量 トリコモナス腟炎
薄い黄色で粘液状 クラミジア子宮頸管炎

おりものの異常の疫学

異常なおりものの原因として最も多いのは感染症で、中でも腟に炎症の起きる細菌性腟症、カンジダ症、トリコモナス腟炎、子宮頸管の感染症であるクラミジア子宮頸管炎の割合が高くなっています。

細菌性腟症

腟内細菌のバランスの崩れによる感染症で、感染による腟炎の40~50%を占めます1)。半数の人では症状はありませんが2)、残り半数には悪臭のある灰白色のおりもの、かゆみや熱感、性交痛といった症状があらわれます。幅広い年齢で発症する可能性があります3)

カンジダ症

75%の女性が生涯に一度は経験するといわれるありふれた感染症で、20代~30代が発症のピークです3)。酒かす状・ヨーグルト状の白いおりものが増え、かゆみがあります。

トリコモナス腟炎

腟トリコモナス原虫による性感染症で、感染性腟炎の15~20%を占め1)、30代~40代に多く発症します3)。大量でにおいの強いおりもの、かゆみや熱感が主な症状です。

クラミジア子宮頸管炎

クラミジアという細菌が子宮頸管部の細胞に感染したもので、性感染症の中で最も割合が高く、10代後半~30代での発症が多くなっています4)。大量のおりものが主な症状ですが、症状がないことも多いです。不妊の原因になることがあるため、心当たりがある場合は早めに受診し、治療するようにしましょう。

女性のライフステージと主な性器感染症
女性のライフステージと主な性器感染症。上述の「細菌性腟症」「カンジダ症」「トリコモナス腟炎」「クラミジア子宮頸管炎」の発症年代をイラストで表現

おりものの異常の検査

問診および内診のほか、腟からおりものを採取して感染の原因菌を調べる検査などを行います。腟鏡という器具で、子宮頸管部の視診をすることもあります。

おりものの異常の治療

原因菌に応じた抗生物質、およびかゆみなどの症状を緩和する外用薬で治療を行います。抗生物質には、内服のタイプと腟内に挿入する腟錠タイプのものがあり、数日間にわたって治療します。
腟錠は、正しく挿入しないと十分な効果が得られません。処方された場合は、医師や薬剤師に正しい使い方を相談しましょう。

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