不正出血

監修

近畿大学医学部 産科婦人科学教室 教授

松村 謙臣 先生

子宮・卵巣にまつわる症状

不正出血

不正出血は、生理期間中以外の性器からの出血の総称です。
何らかの病気や外傷が原因であるもの、服用している薬剤によるもの、ホルモンバランスの崩れによるものなどその原因はさまざまです。妊娠に伴う出血など、病気や異常が関連しないものもあります。
また出血といっても、性交時のみ出血する、おりものに少量の血が混じる程度である、など、出血の仕方もさまざまです。
しかし少量の出血であっても、多くの場合は何らかの病気や異常が背景にあると考えられます。少しの出血だからといって億劫がらず、ぜひ婦人科を受診してみましょう。

不正出血の症状

鮮血、茶色の出血

大量、おりものに混じる程度

期間

1日のみ、数日にわたる

頻度

性交時のみ、性交に関係なく

不正出血の疫学

不正出血は、がんやポリープ、外傷や炎症が原因である器質性出血と、それ以外を総称した機能性出血、そして妊娠に関連した出血に大別されます。機能性出血にはホルモンバランスの崩れが原因であるものが多く、排卵期に起こる中間期出血といった病的ではないものも含まれます。
婦人科以外の病気や服用しているお薬による不正出血は、上記には含まれません。

上述の不正出血の種類を図解で補足。不正出血には器質性出血、機能性出血、妊娠関連の出血、婦人科以外の疾患や薬物による出血がある。機能性出血は不正出血の約3割を占め、思春期や更年期に多いとされる
  • 1)澤田富夫: 不正性器出血. 新女性医学大系, 第1版, 竹谷雄二, 38-52, 中山書店, 東京, 1998.

不正出血の原因として考えられる病気は、以下の表をご覧ください。

※横スクロールにて全体をご確認いただけます。

不正出血の種類 考えられる病気・原因
器質性出血 臓器そのものの病気 子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープ、子宮頸部びらん、子宮頸管ポリープ、子宮内膜(異形)増殖症、子宮体がん、子宮肉腫、子宮頸がん、膣がんなど
炎症による病気 子宮内膜炎、子宮頸部炎、腟炎、骨盤内炎症性疾患など
外傷 性交渉や避妊用具などによる傷、細胞診や組織診、手術など
妊娠時の出血 正常妊娠、流産、切迫流産・早産、異所性妊娠、絨毛性疾患など
その他の出血 婦人科以外の病気 von Willbrand病、特発性血小板減少症など
薬物 精神薬、抗潰瘍薬、抗凝固薬、ホルモン剤、経口避妊薬など
機能性出血 上記以外(ホルモンバランスの崩れなど)
  • 升田博隆 : 機能性子宮出血,産科と婦人科. 2019;86(suppl):86-91.より改変

不正出血の検査

問診、内診、画像検査、血液検査、細胞診や組織診(細胞や組織を採取して詳しく調べる検査)などを行い、不正出血の原因を突き止めます。
服用している薬物の種類や、婦人科以外の病気、摂食異常、ストレス、過度の運動がないかについても、問診で詳しく聴き取ります。
排卵に関連した出血の場合もありますので、基礎体温をつけている方は、診察時に記録を医師に見せるとよいでしょう。

不正出血の治療

不正出血の原因に応じて、器質性出血の場合はがんやポリープの摘出、炎症を抑える治療、外傷の処置などを行います。
機能性出血では、出血量が少なければ自然に止血する場合がほとんどのため、特に治療は必要ありません。出血が多かったり続いていたりする場合は、薬物療法を中心に、症状や患者さんの状態、将来の妊娠を希望するかどうかなどに応じて治療を行います。

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