白血病の治療法

監修:愛知医科大学 血液内科 教授 高見 昭良 先生

Q白血病の種類によって治療は異なるのですか?また、どんな治療法がありますか?

A白血病の治療は、主に抗がん剤分子標的薬と言われる種類の薬剤を使った薬物療法や、放射線療法造血幹細胞移植などがあります。白血病の種類によってはその他の治療法も選択肢になることがあります。それぞれの種類によって病気の進み方や治療法の効き具合が異なり、その特徴を見極めて、適切なものを選ぶ必要があるため、白血病の種類によって、治療方針は異なります。

医師からのメッセージ

治療法の確認ポイント

治療が開始される前には、医師から治療方法の説明があります。治療には、効果だけではなく副作用などの欠点もありますので、わかりやすくまとめてみましょう。紙に書き出してみると、情報が整理されて、理解できたところとできていないところが確認できます。わからない点や不安な点は納得できるまで医師と話してから治療を始めるようにしましょう。

薬物療法は、白血病を含むがんを治す、進行を抑える、または、がんによる全身症状を緩和することを目的としています。がんの薬物治療に使われる薬剤には多くの種類がありますが、白血病治療では、主に抗がん剤分子標的薬といった種類の薬剤が使われます。どの薬剤を、どうやって使うかは白血病の種類によって異なりますが、急性白血病治療では、複数の抗がん剤を同時に使う多剤併用療法という強力な治療が行われたり、慢性白血病治療では、白血病の進行を確認しながら、症状があらわれないように抗がん剤分子標的薬を使ってコントロールしたりします。

放射線は細胞のDNAに傷をつけることから、がんの病巣にあてることで、がん細胞を死滅させる効果をもっています。放射線治療は、がんを治すことや症状を緩和することを目的に使われます。白血病治療では、造血幹細胞移植前に使用されることもあります。

造血幹細胞移植は、白血病を含む血液がんなどの治癒を目的として行われます。ただし、強い副作用や合併症の恐れがあり、個々の患者さんの状況をよく確認し、実施した方がよいか慎重に検討する必要があります。
造血幹細胞移植では、強力な化学療法や全身への放射線照射などを移植前に行って白血病細胞を減らし、自分またはドナーの骨髄末梢血臍帯血から事前に採取した造血幹細胞を移植します。移植前の処置によって、患者さんの免疫の働きも抑えるため、移植された造血幹細胞が患者さんの骨髄で正常に働くことが期待できます。また、ドナーから提供された造血幹細胞を移植する同種造血幹細胞移植の場合は、移植されたドナーのリンパ球が患者さんの体内に残っている腫瘍細胞を攻撃する効果(移植片対白血病効果:GVL効果)も期待できます。患者さん自身の細胞を移植する場合を自家造血幹細胞移植、他人の細胞を移植する場合を同種造血幹細胞移植といいます。

後述の自家造血幹細胞移植と同種造血幹細胞移植をイラストで解説
永井正. 図解でわかる 白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫, 2016, p173 法研

自家造血幹細胞移植は、患者さんの末梢血から造血幹細胞を採取しておき、化学療法や放射線療法による強力な治療を行って白血病細胞を減らした後に体内に戻す方法です。白血病細胞と一緒に正常な血液産生も妨げられますが、患者さん自身の造血幹細胞を戻すことで血液産生の回復を促進します。
同種造血幹細胞移植は、強力な治療で白血病細胞を減らし、患者さんの免疫細胞を抑えた後、白血球の型であるHLAが患者さんと一致した他人(ドナー)から採取した造血幹細胞を患者さんの体内に移す方法です。血液産生の回復のほか、ドナーの細胞が患者さんの体内の白血病細胞を攻撃する作用が期待されます。

白血病においては、「急性」と「慢性」の意味は、他の疾患とは少し違っています。白血病では、急性白血病と慢性白血病は、それぞれ異なった疾患とされています。そのため、急性白血病に長く罹患しても、慢性白血病に移行するわけではありません。
急性白血病では、未熟な白血病細胞が増加しています。一方で、慢性白血病では未熟な白血病細胞だけでなく、成熟した白血病細胞までが増加します。

白血病の急性と慢性について解説したイメージイラスト。急性白血病は分化の中初期で癌化。未熟なまま増殖を繰り返す。慢性白血病は分化の初期で癌化。未熟な白血病細胞だけでなく、成熟した白血病細胞も増殖する。

このページのTOP