肺がんを知る

肺がんの原因

肺がんの原因は遺伝子が傷つき、異常な細胞が増えること

私たちの体は何十兆個もの細胞からできていますが、肺がんは肺の細胞の遺伝子が傷つくことにより発生します。遺伝子に傷がつくと、異常な細胞ができます。この異常な細胞が増え続け、かたまりとなったものが「がん」です。

図:がんが発生するしくみ(イメージ)

遺伝子を傷つける一番の原因は喫煙

遺伝子を傷つける原因にはさまざまなものがありますが、一番の原因は「喫煙」といわれています1)。たばこの煙の中には約200種類もの有害物質が含まれており、この有害物質の中にベンツピレンやニトロソアミン類をはじめとする約60種類もの発がん性物質が含まれていることがわかっています2)
喫煙以外には、大気汚染や、アスベスト、ラドン、ヒ素などの化学物質も遺伝子を傷つける原因になります。

  1. 1)国立がん研究センターがん情報サービス「たばことがん」
    https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/smoking/tobacco02.html(別ウィンドウで開きます)(閲覧日:2022年5月6日)

  2. 2)厚生労働省 健康ネット「最新たばこ情報」(発がん性物質)
    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-041.html(別ウィンドウで開きます)(閲覧日:2022年5月6日)

図:たばこの煙に含まれる主な有害物質
たばこの煙に含まれる主な有害物質には、タール、ベンツピレン、ニコチン、ニトロソアミン類、アンモニア、キノリン、一酸化炭素、ヒドラジン、窒素酸化物、ナフチルアミン、フェノール類、トルイジンなどがあります。

渡辺俊一他監修:国立がん研究センターの肺がんの本. 小学館クリエイティブ. 2018

厚生労働省 健康ネット「最新たばこ情報」(主流煙と副流煙)

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喫煙者の肺がんリスクは男性で4.4~4.5倍、女性で2.8~4.2倍

日本の疫学研究や、多くの研究データを統合して解析した研究によると、たばこには多くの有害物質が含まれるため、たばこを吸う人は、たばこを吸わない人に比べて、男性で4.4~4.5倍、女性で2.8~4.2倍、肺がんになりやすいとされています。また、たばこを吸い始めた年齢が若いほど、吸う本数が多いほど肺がんになりやすいといわれています3)

  1. 3)国立がん研究センターがん対策研究所予防関連プロジェクト「喫煙とがん全体の発生率との関係について」
    https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/263.html(別ウィンドウで開きます)(閲覧日:2022年5月6日)

図:喫煙者の肺がんリスク
喫煙している男女のイラスト

Sobue T. et al., Int J Cancer. 2002;99(2):245-251

Wakai, K. et al., Jpn J Clin Oncol, 2006 ; 36(5) : 309-324
より作図

まわりの人のたばこの煙でも肺がんリスクが高まる

たばこを吸わない人でも、まわりの人のたばこの煙を吸うこと(受動喫煙)で肺がんリスクが高まることがわかっています。しかも、たばこから直接吸い込む煙(主流煙)よりも、たばこから立ち昇る煙(副流煙)の方が、有害物質が多く含まれているのです。たばこを吸わない人でも、身近な人がたばこを吸っている場合には煙を避けるようにすることが大切です。

図:受動喫煙による煙の害
直接吸うたばこの煙の有害物質を1とした場合、副流煙の含まれる有害物質はニコチンが2.8倍、一酸化炭素が4.7倍、ベンツピレンが3.4倍です。

厚生労働省 健康ネット「最新たばこ情報」(主流煙と副流煙)
http://www.health-net.or.jp/tobacco/risk/rs120000.html(別ウィンドウで開きます)(閲覧日:2020年6月3日)より作図

「癌家系」と言う言葉を聞いたことがあるかもしれません。一般的に「癌家系」とは、血縁者に癌を発症された方がいると、遺伝的に癌になりやすいのではないかと言う考えを指し、「家族が肺癌だから自分も…」と心配されている方も多いと思います。肺癌が遺伝するのかどうかについてはまだ不明な点が多く、現時点では家族に肺癌の人がいる場合、いくつかの要因が組み合わさって、かかりやすくなることもあると考えられています。

癌になりやすい体質×生活環境で肺癌になりやすくなることも

家族は遺伝的な要素を共有しているだけでなく、一緒に生活していることで生活環境・習慣も共有していることが多くあります。そのため、家族に肺癌の人がいる場合、こうした遺伝的な要素や、共通した生活環境・習慣が組み合わさって、肺癌にかかりやすくなると考えられています。
肺癌の遺伝的な要素としては遺伝子の傷を修復しにくい体質が、共通した生活環境としては家族の喫煙によるたばこの煙や大気汚染などが考えられます。近年の研究では女性ホルモンが肺癌の発症に影響を及ぼすと言う報告もあります。

図:癌の家族歴のある人は肺癌にかかりやすい
家系図をもとにしたイメージ図。家族にがんになった人がいる場合に、遺伝的要素や共通した生活環境・習慣によって本人ががんになりやすい
参考文献

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