監修 東邦大学医療センター大森病院 呼吸器内科
教授 岸 一馬 先生
非小細胞肺がんの分類
非小細胞肺がんは、肺がん全体の8~9割を占め、「腺がん」「扁平上皮がん」「大細胞がん」などに分類されます。
中でも一番多いのが「腺がん」で、肺がん全体の5~6割を占めます。次いで多いのは「扁平上皮がん」で、約3割を占めます。
腺がん
腺がんは、肺の「肺野部」と呼ばれる部分に多く発生し、X線検査で見つかりやすいがんでもあります。女性の肺がんに多く見られるのもこのタイプです。
腺がんは、遺伝子検査で異常(変異)が見つかるものがあり、遺伝子変異があれば、そのタイプに合った分子標的治療薬による治療が効果的である可能性があります。
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扁平上皮がん
扁平上皮がんは、「肺門部」と呼ばれる肺の入り口付近にある太い気管支に多く発生するがんです。肺野部でも発生することがあります。喫煙者に多く見られ、咳や血痰などの症状が現れやすいがんでもあります。
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大細胞がん
大細胞がんは、非小細胞肺がんの中でも頻度が低いがんで、数%程度です。肺野部に多く発生し、増殖が速いと言う特徴があります。
腺がんの特徴
- ・X線検査で見つかりやすい
- ・女性に多く見られる
- ・遺伝子変異があれば、分子標的薬による治療が効果的なことも
扁平上皮がんの特徴
- ・喫煙者に多い
- ・咳や血痰などの症状が出やすい
- ・肺野部でも発生することも
大細胞がんの特徴
- ・発生頻度は低い
- ・増殖が速い
受動喫煙でも腺癌のリスクが明らかに
喫煙は、肺癌と関係が深いとされています。国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループが行った研究(JPHC Study)で、喫煙と肺癌との関係について、喫煙者は非喫煙者に比べて、男性で4.5倍、女性で4.2倍、肺癌が発生しやすいことが報告されています1)。
また、喫煙と関連が強い肺癌の組織型は、「扁平上皮癌」と「小細胞肺癌」とされていますが、喫煙との関連がそれほど強くないとされる「腺癌」でも、喫煙者は非喫煙者に比べて男性で2.8倍、女性で2.0倍、発生しやすいことが示されています1)。
さらに、JPHC Studyでは、平均13年間の追跡調査中に喫煙歴のない女性の肺癌には腺癌が多いことから、女性の腺癌に限って受動喫煙と腺癌発生率の関連を調べています。その結果、受動喫煙のグループは受動喫煙のないグループに比べて、約2倍、腺癌の発生リスクが高くなることが明らかになりました2)。
- 1)Sobue T. et al., Int J Cancer. 2002;99(2):245-251
- 2)Kurahashi N. et al., Int J Cancer. 2008;122(3):653-657
参考文献
- 日本肺癌学会編:患者さんと家族のための肺がんガイドブック 2023年版.金原出版.2023
- 渡辺俊一他監修:国立がん研究センターの肺がんの本. 小学館クリエイティブ. 2018
- 坪井正博監修:図解 肺がんの最新治療と予防&生活対策. 日東書院. 2016
- Sobue T. et al., Int J Cancer. 2002;99(2):245-251
- Kurahashi N. et al., Int J Cancer. 2008;122(3):653-657