肺がんを知る

肺がんの特徴

肺は「呼吸」を担う臓器

肺は、呼吸によって空気中の酸素を体の中に取り入れて、不要となった二酸化炭素を外に出す働きをする臓器です。肺は「右肺」「左肺」に分かれており、左右の肺と胸椎、胸骨に囲まれた部分を「縦隔」と呼びます。縦隔には気管や食道、大血管、心臓などが存在します。

図:肺の構造
人体における肺の位置を正面および下から見た断面図で解説
●肺の機能

肺は呼吸によって酸素を体の中に取り入れて、不要となった二酸化炭素を外に出します

肺胞で酸素と二酸化炭素を交換

呼吸により体内に取り入れられる空気は、鼻や口から入り、のど、気管を通過していきます。気管は、肺の入り口(肺門部)の手前で左右に枝分かれしています(気管支)。空気は、この気管支を通って、肺に入っていきます。
気管支は、肺の中に入るとさらに枝分かれしています。枝分かれした先の末端には、ブドウの房のような半球状の「肺胞(はいほう)」と呼ばれる器官が連なっています。
肺胞は血液中のガス交換が行われるところです。呼吸によって取り込まれた酸素は、肺胞を介して血液中の二酸化炭素と交換されます。酸素を豊富に含んだ血液は心臓に送られ、心臓から全身をめぐり、二酸化炭素を集めて再び心臓に戻ってきます。二酸化炭素を多く含む血液は心臓から肺に送られ、再び肺胞でガス交換が行われます。このように、肺と心臓をめぐる循環を「肺循環」、全身をめぐる循環を「体循環」と言います。

図:肺の機能
肺のイラストから拡大図で肺胞を示し、肺胞が血液中のガス交換の場であることを図解 肺循環(小循環)」と体循環(大循環)の様子を人体イメージで解説

気管支や肺胞の細胞が、がん細胞となって起こる「肺がん」

肺がんは、気管支や肺胞の細胞が、がん細胞になることで起こります。肺がんのできる部位は、肺門部と肺野部に大きく分けられます。肺門部は太い気管支のある肺の入り口部分で、肺野部は気管支の末梢から肺胞のある肺の奥の部分です。

図:肺がんのできる部位
肺門部と肺野部の位置関係を示した図。がんができる部位は肺門部と肺野部に大きく分けられる。

悪性腫瘍と良性腫瘍

癌(がん)は、「悪性腫瘍」とも呼ばれます。腫瘍とは、不要な細胞が集まってできたかたまりです。健康な体では、細胞は必要なだけ新しく育ち、分裂して生産されています。ところが、必要ではないにもかかわらず、新しい細胞が分裂を続け、増えていくことがあります。こうして増えた細胞のかたまりが腫瘍となります。中でも体に害を与える腫瘍を「癌(悪性腫瘍)」と呼び、悪性腫瘍の細胞は「癌(がん)細胞」と呼ばれます。体に害を与えない腫瘍は「良性腫瘍」で、「癌」ではありません。

肺がんが進行すると転移が起こる

肺がんが進行すると、がん細胞はまわりの組織を押しのけて増殖し、周囲の組織に広がります(浸潤)。そして、血管やリンパ管にも侵入し、血液やリンパの流れに乗って、他の臓器などにたどりつき、そこで新たに増殖します。これを転移と言います。

図:がんの転移(イメージ)
がん細胞が血液やリンパの流れに乗って、他の臓器などに広がる転移をイメージで解説

関連リンク

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男性や年齢が高い人では肺がんの罹患率は高くなる

肺がんは、年齢が高いほど発症する患者さんが多くなります。2015年の罹患率を年齢別に見ると、40代から増え始め、50代、60代と加齢と共に高くなります。また、女性よりも男性の罹患率が高くなっています。

図:年齢別 肺がんの罹患率(2018年)

国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/12_lung.html#anchor2(別ウィンドウで開きます)(閲覧日:2022年5月6日)

肺がん患者数は増加傾向

肺がんは、加齢と共に罹患率が高くなります。高齢化社会に伴い、高齢人口が増えていることから、男性・女性とも、肺がん患者さんの数は増加しています。2018年の国立がん研究センターの統計1)によると、男性では、胃がんや大腸がん、前立腺がんに次いで肺がんの罹患率が4番目に高く、女性でも、乳がん、大腸がんに次いで3番目に高くなっています。

1)がん研究振興財団:がんの統計2022, 2022年3月, p23.

図:部位別罹患率の年次推移(1975年~2015年)

国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」(全国がん罹患モニタリング集計(MCIJ))
http://gdb.ganjoho.jp/graph_db/(別ウィンドウで開きます)(閲覧⽇:2020年6⽉3⽇)

3.6人に1人が、癌で亡くなる時代

かつて戦前から終戦直後までは、日本人の死亡原因の第1位は、結核や肺炎などの感染症でした。しかし、感染症の治療法が進歩したことや、衛生状態がよくなったことなどから、感染症による死亡率は年々減少していき、やがて脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患が日本人の死亡原因の第1位となりました。ところが1970年をピークに、脳血管疾患の死亡率も低下しています。一方で、死亡率が上昇の一途をたどっているのが「癌」です。
「癌」が日本人の死亡原因の第1位になったのは、1981年のことです。最近の厚生労働省の統計では、2020年に癌で亡くなったのは全死亡者の27.6%で、およそ3.6人に1人が癌で亡くなっていることになります2)

2)厚生労働省:令和元年2年(20192020)人口動態統計月報年計(概数)の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai20/index.html(別ウィンドウで開きます)(閲覧日:2022年5月6日)

参考文献

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