監修 愛知県がんセンター 病院長
山本 一仁 先生
発熱の原因は多様に存在する
発熱する原因には、さまざまなものがあります。原因がわからない高熱が続いたり、熱が上がったり下がったりするときには、重篤な病気の可能性も考えて、早めに病院を受診するようにしましょう。
不明熱とは
「不明熱」は正式な病名で、原因不明の高熱が続く状態を指します。不明熱は、その臨床的な状況によって、古典的不明熱、好中球減少状態での不明熱、院内発症の不明熱、HIV感染患者にみられる不明熱の4つに分類されます1)。それぞれの定義は表のとおりです1)。病院で不明熱と診断された場合は、原因となる病気について精査していきます。
1. 古典的不明熱 |
---|
|
2. 院内不明熱 |
|
3. 好中球減少性不明熱 |
|
4. HIV関連不明熱 |
|
不明熱の原因となる病気
「感染症」「膠原病」「悪性腫瘍」が主な原因と考えられており、感染症が30%前後、悪性腫瘍が15-25%、膠原病が20%前後とする報告が多くみられます1)。
感染症では、膿瘍、骨髄炎、感染性心内膜炎、胆道系感染症、尿路感染、結核(特に粟粒結核)などが原因とされています。
膠原病では、全身性エリテマトーデス(SLE)、成人スティル病、過敏性血管炎、リウマチ性多発筋痛症(側頭動脈炎)、結節性多発動脈炎などが原因とされています。
悪性腫瘍では、リンパ腫、白血病(MDS等)、腎細胞癌、肝細胞癌等が挙げられています。
不明熱の原因を確認するためのアプローチとしては、比較的早めの診断・治療が必要となる感染症を中心に診断を勧めます。感染症に対しては、血液培養を行い、可能性のある感染症に特異的な検査項目を確認し、高齢患者さんでは結核感染の確認もします。
その他、超音波検査、生検、上下部消化管検査、FDG-PETなども用いて、膠原病や悪性腫瘍についても検査を行います。
熱が上がったり下がったりする場合
発熱したときの体温の変化にはいくつかのパターンがあり、病気によって、特徴的なパターンを示すことがあります。
熱が平熱まで下がらないまま上がったり下がったりするパターンを弛張熱といいます。1日の体温の変動の差は1℃以上になります。敗血症、化膿性疾患、ウイルス疾患、悪性腫瘍などでみられます。
発熱している状態と平熱の状態が不規則に交代であらわれるパターンを波状熱といいます。ホジキンリンパ腫、ブルセラ、マラリア、腎結石、胆道閉塞などでみられます。
その他、発熱の原因として、たとえば、抗生物質の服用を自分の判断で止めてしまうなど、発熱の原因となる病気の治療を中断してしまったときや、免疫機能や体力の低下、ストレスなども考えられます。