Q.多発性骨髄腫などの形質細胞の悪性腫瘍にはどのようなものがありますか?
A.
形質細胞ががん化した形質細胞性腫瘍は様々な病型をとりますが、ほとんどは多発性骨髄腫です。多発性骨髄腫のなかには典型的な症状がみられるもののほかに、形質細胞やMタンパクが増加していても症状がみられないものや、Mタンパクがみられないものなどの、さまざまな病型(病気のタイプ)があります。それぞれの疾患を区別し病型を知ることは、治療を進める上でとても重要です。形質細胞の悪性腫瘍の病型は、骨髄の中の異常な形質細胞(骨髄腫細胞)の有無、血液・尿中のMタンパクの有無、臓器障害(高カルシウム血症、貧血、腎不全、骨病変など)の有無などを基準にして、以下の5つに分類されます。
さらに、病期(ステージ)といって、血液検査の数値によって、病気の進行度や予後を推し測るための分類があります。詳しくは、解説コラム「多発性骨髄腫の病期(ステージ)」をご参照ください。
表:多発性骨髄腫などの形質細胞の悪性腫瘍の分類
意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS) | Mタンパクや骨髄内の骨髄腫細胞が少なく、骨髄腫の診断基準を満たさず、臓器の障害も認められません。治療の必要はありませんが、一部の患者さんは多発性骨髄腫やその他の病型に進展する可能性があるため、定期的な検査を行います。 |
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くすぶり型多発性骨髄腫(無症候性骨髄腫) | 骨髄腫細胞やMタンパクが一定量以上に増加しており、多発性骨髄腫の診断基準を満たしますが、症状や臓器障害がみられない状態です。基本的には治療は行いませんが、多発性骨髄腫に進展する可能性があるため、定期的な検査を行います。 |
多発性骨髄腫(症候性骨髄腫) | 血液や尿中のMタンパクと骨髄腫細胞が増加し、骨髄腫形質細胞腫瘍による臓器障害(高カルシウム血症、腎障害、貧血、骨病変)か、これらを認めなくても短期間に病気の進行するリスクが高いことを示すバイオマーカーの異常が認められます。治療の対象となります。 |
孤立性形質細胞腫 | 骨や軟部組織に骨髄腫細胞による腫瘍ができます。多発性骨髄腫に病型が変化する可能性もあります。腫瘍に対して放射線治療や化学療法などを行います。 |
形質細胞白血病 | 末梢血中で骨髄腫細胞が増殖した病型をいいます。リンパ節や臓器の腫れなどの骨髄以外の病変や、臓器障害の進行も認められることが多いとされます。 |
症状のみられる多発性骨髄腫では、予後などに影響するため、病期を把握することは重要です。多発性骨髄腫は血清β2ミクログロブリン値とアルブミン値によって、Ⅰ~Ⅲの3つの病期に分類されます。数字が大きいステージほど、病気が進行した状態をあらわします。
表:多発性骨髄腫の病期
Stage | 基準 | 50% 生存期間 |
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Ⅰ | 血清β2ミクログロブリン<3.5mg/L 血清アルブミン≧3.5g/dL |
62カ月 |
Ⅱ | ⅠでもⅢでもないもの | 44カ月 |
Ⅲ | 血清β2ミクログロブリン≧5.5mg/L | 29カ月 |