Q.多発性骨髄腫になると、どのような症状があらわれますか?
多発性骨髄腫では、さまざまな症状が起こります(下図)。
骨髄腫細胞が骨髄の中で増殖することによって、大きく分けて、造血が妨げられることにより生じる症状、Mタンパク(異物を攻撃する働きのない抗体)が作られ続けることによる症状、骨が溶けることにより生じる症状があらわれます1)。
造血が妨げられることにより生じる症状1)
Mタンパク(異物を攻撃する働きのない抗体)が作られ続けることによる症状1-3)
骨髄腫細胞が増殖すると、正常な形質細胞がうまく働けなくなり、正常な抗体(免疫グロブリン)の代わりに免疫機能を持たないMタンパクがつくられ、逆に本来あるべき抗体(免疫グロブリン)が極端に減ってしまいます。すると、免疫機能の低下がみられ、肺炎や尿路感染症、帯状疱疹などの感染症が起こりやすくなります。
また、Mタンパクが血中に増えることにより、血液がドロドロになり、うまく循環しなくなったり(過粘稠度症候群)、Mタンパクの成分が心臓や腎臓、胃腸、神経などに沈着し、それらの臓器の障害によって多種多様な症状をもたらしたりします(アミロイドーシス)。
骨が溶けることにより生じる症状1,4-6)
骨髄腫細胞の産生する物質により、骨を壊す働きを持つ破骨細胞が刺激され、骨が溶けて腰や背中(背骨)、ろっ骨、大腿骨などをはじめとした骨の痛みや病的な骨折、脊髄圧迫による下肢などの麻痺といった症状があらわれることがあります。また、骨が溶けてしまうことで、血液中にカルシウムが溶け出して、高カルシウム血症が起こることがあります。高カルシウム血症は気分不良や吐き気、腎不全のほか、高度になると意識障害や命に関わる不整脈を起こす原因になる重大な症状です。
この中で、高カルシウム血症,腎不全、貧血、骨の病変のうち1つ以上の症状がみられた場合には治療を行います。
一方で、自覚症状のない多発性骨髄腫も存在し、血液検査や尿検査などで発見される場合もしばしばです。