多発性骨髄腫ってどういう病気なの?
多発性骨髄腫は「血液の悪性腫瘍」で、がんの一つであり、血液細胞の1つである形質細胞が、がん化する病気です。形質細胞は、本来、体内に侵入した異物(細菌やウイルス)を攻撃する「抗体(免疫グロブリン)」を作る働きをしています。個々の形質細胞が異なる抗体を作り出し、さまざまな異物を攻撃することができます。しかし、この形質細胞ががん化し、骨髄腫細胞となって骨髄の中で増えると、正常な抗体(免疫グロブリン)の代わりに異物を攻撃する働きのない抗体(Mタンパク)だけを作るようになります。この骨髄腫細胞や、Mタンパクが多発性骨髄腫のさまざまな症状の原因となります。
骨髄腫細胞からのMタンパク産生(イメージ図)

永井正. 図解でわかる 白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫, 2016, p233, 法研より改変
血液ができるまで
免疫のしくみ~形質細胞と抗体(免疫グロブリン)の役割
皮膚や粘膜の傷などから、体内に異物が侵入すると、まずマクロファージや樹状細胞などがその異物を食べ(貪食)、リンパ節に移動し、T細胞に異物の情報を伝えます。情報を受け取ったT細胞は、ヘルパーT細胞となって、B細胞に異物に合わせた抗体(免疫グロブリン)を作るように指令を出します。指令を受けたB細胞は、抗体(免疫グロブリン)を作る働きを持つ形質細胞に変化し、指令をもとに異物に対応する抗体(免疫グロブリン)を作り出します。
抗体(免疫グロブリン)は、異物に対応するように作られているため、標的となる異物を選んで結合し、細胞への侵入を防ぎます。また、抗体が結合した異物は、好中球に攻撃されやすくなります。これらの働きにより、異物が撃退されます。

松本健治 監. 運動・からだ図解 免疫学の基本, 第2章 免疫を担うもの, p59, マイナビ出版, 2018より改変
松本健治 監. 運動・からだ図解 免疫学の基本, 第3章 外的撃退のプロセス, p109, マイナビ出版, 2018より改変
イラスト:池田聡男(池だ工房)