薬物療法
～先生からのメッセージ～
薬物療法の目的は大きく分けて3つあります。
すなわち、①手術前にがんを小さくして取りやすくしたり切除範囲を小さくしたりすること、②手術後に体のどこかに隠れているがん細胞を死滅させて再発を予防すること、③他臓器へ転移したがんを治療することです。
乳がんの薬物療法には、いわゆる抗がん剤のほか、分子標的治療薬※、ホルモン療法薬が使われます。
※特有の分子を狙い撃ちする薬剤（例：抗HER2薬など）
乳がんに対する薬物療法のイメージ
薬物療法の種類
がん細胞の増殖の要因や増殖の活発さによって、効果的な薬物の種類は異なります。
実際はサブタイプに応じて、以下の3種類（ホルモン療法、分子標的療法、化学療法）の治療を組み合わせたり、1種類だけを実施したりします。
ホルモン療法
がん細胞の増殖に関わる女性ホルモンのエストロゲンを減らすお薬や、エストロゲンがホルモン受容体に結合するのを阻止するお薬を使う治療です。エストロゲンが増殖に関わるタイプのがん（ホルモン受容体陽性乳がん）に効果的です。
分子標的療法
分子標的治療薬を使う治療です。がんのタイプによって効果のある薬剤は異なりますが、HER2が増殖に関わるタイプのがんには抗HER2薬（HER2からの「増殖せよ」という指令を防ぐ作用を持ったお薬）が有効です。
化学療法
抗がん剤（がん細胞の増殖に関わる機能にダメージを与えるお薬）を使った治療です。
手術後の薬物療法は、再発リスクの高さに応じて行うかどうか決められます。再発リスクを予測する因子には、主に下記のようなものがあります。
- 腫瘍のサイズが大きい
- 悪性度が高い
- HER2が発現している
- がん周辺の血管やリンパ管にがん細胞が入り込んでいる（脈管侵襲）
- リンパ節転移がある
- 増殖のスピードが速い など
薬物療法もまた、これから治療を行う患者さんを不安にさせるものです。確かにつらい副作用があることは否定できませんが、以前に比べると治療のつらさはだいぶ軽くなりました。副作用を軽くするお薬があったり、外見上の変化（脱毛、爪の変形や変色、色素沈着）に対応するためのファッションアイテムも登場しています。