遺伝性乳がんって?
~先生からのメッセージ~
乳がんはもともと、家族との関わりが強いがんだと言われています。特に近しい家族に乳がん患者さんが多くいる場合は、遺伝性の乳がんである可能性があります。
遺伝性乳がんは特定の遺伝子の性質が原因となるもので、近年では検査でその遺伝子を持っているのかどうかがわかるようになっています。
この病気のことを正しく理解することで、不安な気持ちは少しだけ軽くなるかもしれません。
遺伝性乳がん卵巣がん症候群
(hereditary breast and ovarian cancer:HBOC)
乳がんのうち5~10%は遺伝子が発症に関わっており、そのほとんどがBRCA1およびBRCA2という遺伝子に原因があるとされています1)。
BRCA1/2に生まれつきがんを引き起こすような特徴があると、乳がんや卵巣がんを発症する可能性が一般の人より高くなり、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(hereditary breast and ovarian cancer:HBOC)と呼ばれています。
HBOCでは通常の乳がんとは異なる治療法を行うこともあるため、HBOCであると確定することがとても重要です。
米国予防医学専門委員会では、HBOCが疑われる条件として以下のものを挙げています2)。当てはまるものがある方はHBOCの可能性が考えられますので、担当の医師にご相談ください。
- あなたが乳がんを発症したのは50歳未満ですか?
- ご家族で乳がんを発症された方はいらっしゃいますか?
- ご家族で乳がんと卵巣がんの両方を発症した方はいらっしゃいますか?
- ご家族でBRCA遺伝子変異が関連するがん(卵巣がんなど)を発症された方はいらっしゃいますか?
HBOCの乳がんには、若い年齢で発症すること、サブタイプがトリプルネガティブであることが多いなどの特徴があります。また一般の人に比べて乳がん・卵巣がんの罹患率が非常に高くなっています1, 2)。
生涯の発症確率 | 一般人の場合 | HBOCの方の場合 |
---|---|---|
乳がん | 10.9%1) | 38~87%2) |
卵巣がん | 1.6%1) | 16.5~63%2) |
HBOCは、自分で予防することができず、また乳がんのみならず卵巣がんを発症する可能性も高いという、とても辛い病気です。このような自分ではどうしようもないことにぶつかったとき、人は無力感を覚えてしまいがちです。
自分はHBOCではないか、という不安がある方は、ぜひ担当の医師にご相談ください。小さなことでもそうやって主体的に動くことで、少しずつ不安や恐怖を和らげることができると思います。