乳がん手術の合併症~上肢リンパ浮腫
~先生からのメッセージ~
上肢リンパ浮腫予防のために、生活の中で気をつけていただきたいことをご紹介します。「リハビリをしましょう」でご紹介した運動も、上肢リンパ浮腫予防効果が期待されます。
手術をした側の腕にむくみや重さ、曲げづらさなどを感じるときは、リンパ浮腫を発症している可能性があるため、受診するようにしましょう。
リンパ浮腫予防のために気を付けましょう
- 体に負担をかけない
- 長時間の入浴やサウナ、腕に負担のかかる運動、重いものを持つこと、体を締め付ける衣類やアクセサリーは避ける
- 体に負担がかかると、負担のかかった部分が圧迫されることでリンパの流れが滞り、リンパ浮腫が発生・悪化することがあります。
- 太らないようにする
- 皮下脂肪によってリンパの流れが滞ることがあります。
- 保湿と感染予防を行う
- 常に清潔で潤った状態を保ち、傷や虫刺され、やけどに気を付ける
(リンパ液・血液の循環が悪い状態で感染を起こすと、蜂窩織炎(ほうかしきえん)※を起こす可能性があり、抗生物質による治療が必要となることがあります)
- はり・灸やマッサージ、美容目的のリンパドレナージ(皮膚をさすって滞ったリンパ液を流れやすくする技術)は絶対に行わない
- リンパ浮腫の治療や予防として行われるリンパドレナージは、リンパ浮腫の改善に特化した専門的なものです。美容などそれ以外の目的のリンパドレナージやマッサージを受けると、かえってリンパ液の流れが滞ってしまう可能性があります。
むくみが生じたら受診しましょう
- イラストを参考に、腋窩リンパ節郭清後にむくみやすい箇所を入浴時などにチェックしましょう。
- 皮膚のしわがなくなってはいないか?
- つまみにくい、硬くなっていたりはしないか?
- 指で押すと、跡が残ったりしないか?
- 袖口や下着、アクセサリーの跡が残ったりしないか?
上肢リンパ浮腫になってしまった場合は、医療機関で治療を行います。複合的治療といって、弾性着衣や包帯による圧迫療法(専用の包帯などで腕を圧迫し、リンパ液を流れやすくする治療法)を中心に、運動療法、医療目的のリンパドレナージ、スキンケアを状態に応じて組み合わせるものです。
なってしまったら大変! 蜂窩織炎
リンパ浮腫によって循環が悪くなったところに細菌感染が起きると、一気に炎症が広がり、皮下に大量のたんぱく質と水分がたまって固まってしまいます。この状態を蜂窩織炎といい、虫刺されのような赤い斑点が出たり、腕全体が赤くなって高熱が出たりするなどの症状があらわれます。
もし蜂窩織炎になってしまったら、赤い部分を冷やして腕を高い位置に維持して安静にし、速やかに受診しましょう。その際に重要なことは、安静を保つこと、そして医師が完全に治ったと判断するまで、処方された抗生物質をすべて飲み続けることです。炎症が完全に収まる前に服用を止めてしまうと、腕の中に細菌が残ってしまい、何かのきっかけで蜂窩織炎が再発することがあります。
腕を上げる以外の運動は炎症悪化につながるので、蜂窩織炎の治療中は、リハビリはもちろん、家事や仕事はすべて中止しなければなりません。また飲酒も厳禁となりますので、普段から蜂窩織炎にならないように、リンパ浮腫予防を心がけておきましょう。