監修 慶應義塾大学医学部 産婦人科学教室 准教授・婦人科診療副部長
阪埜 浩司 先生
子宮頸がんの原因
子宮頸がんは発生原因が分かっている数少ないがんの一つで、その原因は皮膚や粘膜に存在するヒトパピローマウイルス(HPV)への感染です。
主に性交渉によって感染しますが、何らかの原因でその感染が持続すると、正常細胞とは異なった形の細胞が作られ、その一部が5年から10数年かけてがんに進行することがわかっています。
HPVウイルスとは?
HPVは、決して珍しいウイルスではありません。性交渉の経験のある女性なら、一生に一度はHPVに感染するといわれています1-3)。
子宮頸がんの原因となるのは特定のタイプのHPVのみで、それ以外のタイプは尖圭コンジローマ(良性のいぼ)を引き起こします。
子宮頸がんになりやすい人
子宮頸がんの直接の原因は、性交渉によるHPV感染が持続することです。そのため性交渉の多さやパートナーが多いことは子宮頸がんのリスクとなります4, 5)。また喫煙と免疫力の低下、出産回数の多さ、ピルの長期服用も、子宮頸がんと関連があるとされています6, 7)。
- 1)Brown DR, et al.:J Infect Dis 2005;191:182-192.
- 2)Koutsky L.:Am J Med 1997;102:3-8.
- 3)Bosch FX, et al.:J Natl Cancer Inst Monogr 2003;31:3-13.
- 4)Rotkin ID: Cancr Res 1973;33:1353-1367.
- 5)Peters RK, et al.: J Natl Cancer Inst 1986;77:1063-1077.
- 6)WHO: Human papillomavirus (HPV) and cervical cancer, 24 January 2019.
- https://www.who.int/en/news-room/fact-sheets/detail/human-papillomavirus-(hpv)-and-cervical-cancer(別ウィンドウで開きます)
(2023年9月閲覧) - 7)Moreno V, et al.: Lancet2002;359:1085-1092.
子宮頸がんの最初のきっかけであるHPV感染は、ほとんどが性交渉によって起こります。そのため、性行為の経験がなければ、子宮頸がんになるリスクは低いといえます。しかし、一回でも経験がある場合は、油断は禁物です。現在性交渉がなくても、以前の性交渉でHPVに感染していて、今はウイルスの潜伏期間である可能性があるからです。
では性行為の回数が多いと、子宮頸がんになりやすいのでしょうか? 答えは「いいえ」です。性交渉が多ければそれだけHPV感染の機会が増えるというリスクはありますが、だからといってHPV感染から子宮頸がんに進行する確率が上がる、ということにはなりません。
性交渉がきっかけの病気、で多くの人が連想するのが、いわゆるSTD(性感染症)でしょう。STDの予防にはコンドームの使用が第一に推奨されますが、HPVはコンドームでカバーしきれない肛門などにも存在しているため、HPV感染についてはワクチン接種が最も有効な予防策です。性行為のパートナーにも感染させてしまう可能性はHPV感染も同様ですから、普段からコンドームを使用するようにするとよいでしょう。