監修 東邦大学医療センター大森病院 呼吸器内科
教授 岸 一馬 先生
肺がんの確定診断をするための検査
肺がんの確定診断には、肺に異常が見られる場所(病変)の組織を一部採り出して顕微鏡で観察し(生検)、がんであることを確認する病理学的検査(病理組織検査)の必要があります。これを病理診断と言い、病理診断で肺組織にがん細胞が確認されると「肺がん」と診断が確定されます。
気管支鏡検査などで組織を採り出して調べる(生検)
病変部の組織や細胞を採取するために行う方法(生検)には、気管支鏡検査、経皮的針生検、胸腔鏡検査などがあります。気管支鏡検査は口や鼻から入れることができる内視鏡を用いることで、体表に傷をつけずに行うことができる検査です。経皮的針生検では体長から針を刺し、胸腔鏡検査では外科手術を伴います。そのため組織の採取には負担の少ない検査から順に実施を検討しますが、病変がある場所によっては負担の大きい検査が選択されることもあります。
表:組織や細胞を採取するために行う主な検査(生検)
※横スクロールにて全体をご確認いただけます。
気管支鏡(きかんしきょう)検査 |
|
---|---|
経皮的針生検(けいひてきはりせいけん) |
|
胸腔鏡(きょうくうきょう)検査 |
|
表:その他の検査方法
※横スクロールにて全体をご確認いただけます。
胸水細胞診 | 胸水がたまっている場合に、胸水を採取してがん細胞が含まれているかを調べる。 |
---|---|
リンパ節生検 | 首のリンパ節が腫れている場合に、そのリンパ節に針を刺して細胞やリンパ節の一部を採り出し、がん細胞が含まれているかを調べる。 |
開胸生検 | がんの疑いが強く、がんが肺にとどまっている(転移していない)可能性が高い場合に、外科手術により組織を採り出して調べる。 |
現在は、肺がんと診断がついたら、さまざまな遺伝子の検査を行って一人ひとりに適した治療方法を決める「個別化医療」を行うことがあります。こうした検査を行うためには、「がん細胞」を少し多めに採り出しておく必要があります。
病理診断の結果が出るまでには数日~2週間
検査後、すぐに診断が確定するわけではありません。生検を行ってから病理診断の結果が出るまでには、数日から2週間ほど時間がかかります。
生検でがん細胞が確認されたら、「肺がん」の診断が確定します。肺がんは、生検の結果から小細胞肺がんの「小細胞がん」と非小細胞肺がんの「腺がん」「扁平上皮がん」「大細胞がん」の4つの組織型に分けられ、それぞれの組織型に基づいて治療方針を決めていきます。
参考文献
- 日本肺癌学会編:患者さんと家族のための肺がんガイドブック 2023年版.金原出版.2023
- 渡辺俊一他監修:国立がん研究センターの肺がんの本. 小学館クリエイティブ. 2018
- 坪井正博監修:図解 肺がんの最新治療と予防&生活対策. 日東書院. 2016