肺がんの検査肺がんの検査方法

確定診断のために行われる検査

肺がんの確定診断をするための検査

肺がんの確定診断には、肺に異常が見られる場所(病変)の組織を一部採り出して顕微鏡で観察し(生検)、がんであることを確認する病理学的検査(病理組織検査)の必要があります。これを病理診断と言い、病理診断で肺組織にがん細胞が確認されると「肺がん」と診断が確定されます。

図:病理診断

気管支鏡検査などで組織を採り出して調べる(生検)

病変部の組織や細胞を採取するために行う方法(生検)には、気管支鏡検査、経皮的針生検、胸腔鏡検査などがあります。気管支鏡検査は口や鼻から入れることができる内視鏡を用いることで、体表に傷をつけずに行うことができる検査です。経皮的針生検では体長から針を刺し、胸腔鏡検査では外科手術を伴います。そのため組織の採取には負担の少ない検査から順に実施を検討しますが、病変がある場所によっては負担の大きい検査が選択されることもあります。

表:組織や細胞を採取するために行う主な検査(生検)

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気管支鏡(きかんしきょう)検査
【どんな検査?】
気管支鏡と呼ばれる直径5㎜ほどの細い内視鏡を、口や鼻から気管・気管支へ挿入してがんが疑われる部位の細胞や組織を採り出す検査。
内視鏡が届く肺門部にがん病変がある場合は気管支鏡で直接観察しながら細胞や組織を採り出すが、その先の末梢気管支に病変がある場合は気管支鏡の先端についている器具をX線で観察しながら操作し、細胞や組織を採り出す。
気管や気管支に気管支鏡が通ると苦しいため、のどや気道の粘膜にスプレーで麻酔をかけて行う(局所麻酔)。より苦痛を軽減するために、痛みを抑える薬や眠たくなる薬を注射することもある(静脈麻酔)。
【検査の合併症は?】
  • 出血
  • 気胸(肺に穴があいて、肺がしぼんでしまう状態)
  • 発熱 など
【こんな人は注意しましょう】
脳血管や心臓の病気で、血液がサラサラになる薬(抗血小板薬、抗凝固薬、抗血栓薬)を服用している人
経皮的針生検(けいひてきはりせいけん)
【どんな検査?】
局所麻酔を行い、超音波やX線、CTでがんが疑われる場所を確認しながら、肋骨の間から皮膚を通して細い針を刺しこみ、がんが疑われる場所から細胞や組織を採り出す検査。
【この検査が行われるのは?】
  • がんが疑われる場所まで気管支鏡が届かない場合
  • がんが疑われる場所が体の表面に近いところにある場合
【検査の合併症は?】
  • 気胸(肺に穴があいて、肺がしぼんでしまう状態)
  • 喀血(肺出血)
  • 頻度低い:肺と胸壁との間のスペース(胸腔)にがん細胞が広がってしまう(播種)
  • まれに:空気塞栓(針の穴から血管に空気が入って血管を詰まらせてしまう)
胸腔鏡(きょうくうきょう)検査
【どんな検査?】
胸壁に小さな穴を1~3か所あけ、胸腔鏡と呼ばれる内視鏡を肺と胸壁の間のスペース(胸腔)に挿入して細胞や組織を採り出す検査。
局所麻酔または全身麻酔をかけて実施。
【この検査が行われるのは?】
  • 他の方法では細胞や組織が採り出しにくい場合
  • 他の検査でがん細胞が発見されていないが、画像検査からがんの疑いが否定できない場合
表:その他の検査方法

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胸水細胞診 胸水がたまっている場合に、胸水を採取してがん細胞が含まれているかを調べる。
リンパ節生検 首のリンパ節が腫れている場合に、そのリンパ節に針を刺して細胞やリンパ節の一部を採り出し、がん細胞が含まれているかを調べる。
開胸生検 がんの疑いが強く、がんが肺にとどまっている(転移していない)可能性が高い場合に、外科手術により組織を採り出して調べる。

現在は、肺がんと診断がついたら、さまざまな遺伝子の検査を行って一人ひとりに適した治療方法を決める「個別化医療」を行うことがあります。こうした検査を行うためには、「がん細胞」を少し多めに採り出しておく必要があります。

病理診断の結果が出るまでには数日~2週間

検査後、すぐに診断が確定するわけではありません。生検を行ってから病理診断の結果が出るまでには、数日から2週間ほど時間がかかります。
生検でがん細胞が確認されたら、「肺がん」の診断が確定します。肺がんは、生検の結果から小細胞肺がんの「小細胞がん」と非小細胞肺がんの「腺がん」「扁平上皮がん」「大細胞がん」の4つの組織型に分けられ、それぞれの組織型に基づいて治療方針を決めていきます。

参考文献
  • 日本肺癌学会編:患者さんのための肺がんガイドブック 2019年版. 金原出版. 2019
  • 渡辺俊一他監修:国立がん研究センターの肺がんの本. 小学館クリエイティブ. 2018
  • 坪井正博監修:図解 肺がんの最新治療と予防&生活対策. 日東書院. 2016

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