肺がんの検査肺がんの検査方法

肺がんの疑いを調べる検査
(スクリーニング検査)

健康診断や肺がん検診で肺がんを早期に発見

肺がんは、特徴的な症状がなく、がんが発見されたときには進行していたり、他の臓器へがんが転移していたりすることもまれではありません。がんが進行してしまっていると、治療が難しいこともあります。
早い段階で肺がんを見つけるためには、健康診断で行われる胸部X線検査や喀痰細胞診(かくたんさいぼうしん)が有効とされています1)。定期的な健康診断を受けていない方は、市町村で実施している肺がん集団検診を利用すると良いでしょう。肺がん集団検診は、男女とも40歳以上が対象で、毎年1回実施されています。多くの市町村ではがん検診の費用を公費で負担しており、一部の自己負担でがん検診を受けることができます。

  1. 1)日本肺癌学会編:肺癌診療ガイドライン2021年版 CQ1, 2
    https://www.haigan.gr.jp/modules/guideline/index.php?content_id=3(別ウィンドウで開きます)(閲覧日:2022年5月6日)

表:健康診断や肺がん検診で行われる検査
健康な人、喫煙習慣がない人 胸部X線検査
喫煙している人 胸部X線検査
喀痰細胞診(かくたんさいぼうしん)

特に、肺がん全体の5~6割を占める「腺がん」は、胸部X線検査や胸部CT検査で見つかりやすいがんで、定期的な肺がん検診で発見されることも少なくありません。また、喫煙者に多く見られる「扁平上皮がん」は太い気管支に多く発生するため、喀痰細胞診で、気管支を通って出された痰の中にがん細胞が含まれているかどうかを調べることで、がんの発見につながります。

肺がん検診で行われる胸部X線検査(レントゲン検査)

特に自覚症状がない時期の肺がんを、最も手軽に検査できるのが「胸部X線検査」(レントゲン検査)です。健康診断や肺がんの集団検診で行われています。

図:胸部X線検査
胸部X線検査は、肺野部にできるがんの発見に有効で、腺がんを見つけやすい検査です

喫煙している人には喀痰細胞診

肺がん検診では、原則50歳以上の喫煙者(過去における喫煙者も含む)でヘビースモーカーの場合に、喀痰細胞診が行われます。喫煙者でなくても、咳が出る、痰の量が多い、血痰が出るなどの症状がある場合にも、喀痰細胞診が行われます。1回の検査ではがん細胞が発見しにくいため、数日分の痰を採取して検査することもあります。
なお、肺がん検診では肺がんを見つけるために血液検査で腫瘍マーカーを測定することはありません。

図:喀痰細胞診
喀痰細胞診では、痰を採取容器に回収して検査します。肺門部にできるがんの発見に有効で、扁平上皮癌を見つけやすい検査です

1日に吸うたばこの本数と喫煙歴から計算

喀痰細胞診を行うかどうかの目安となるのが、「喫煙指数」です。喫煙指数が400~600以上の場合に、喀痰細胞診を行います。

喫煙指数の算出方法
「1日に吸うたばこの本数(平均)」×「喫煙年数」

例えば、毎日20本、30年間吸い続けている場合には、喫煙指数は600となり、喀痰細胞診を行います。

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気になる症状があるときの検査

健康診断や肺がん検診ではなく、気になる症状があって検査を受ける場合においても、まずは胸部X線検査や喀痰細胞診といった肺がんが疑われるかどうかのスクリーニング検査が行われます。疑わしい点がなければ、検査は終了です。

肺がんが疑われるときは胸部CT検査

健康診断や肺がん検診で肺がんが疑われた場合は、肺がんかそれ以外の病気かどうか、もう少し詳しく調べるために、胸部CT検査が行われます。CT検査は、X線を使って胸を輪切りにした断層写真を撮り、コンピューターで画像を作成してがんが疑われる病変があるかどうかを確認します。
ただし、CT検査では、見つかった病変が肺がんであるかどうかの確定まではできないため、確定診断のためにはさらに検査が必要です。
なお、肺がんの疑いを調べる目的で、MRI検査を行うことはあまりありません。MRI検査が行われるのは、肺がんの状態がどれくらい進行しているかを調べるときです。

図:胸部CT検査(マルチスライスCT)

風邪や気管支炎、気管支拡張症、心臓病などと鑑別

肺癌の一般的な症状である、長引く咳や痰、血痰、胸の痛み、呼吸困難などは、風邪の症状にも似ています。また、長引く咳や痰は、風邪だけでなく、気管支炎や気管支拡張症、結核などでも見られます。血痰は、肺結核や気管支拡張症でも見られる症状ですし、胸の痛みはがんではない他の肺の病気や心臓の病気である場合もあります。
胸部CT検査は精度が高く、肺癌以外の小さな病変もたくさん見つかります。肺癌か、それ以外の病気かは、専門医による鑑別が重要になります。肺癌の確定診断は、組織を調べて癌細胞が含まれていることが確認されてからとなります。
また、「異型腺腫様過形成」と呼ばれる、腫瘍の性質は持っているが、肺癌ほど悪性ではない病気の場合もあり、CT検査で通常0.5cm以下の白っぽく淡いすりガラス状の陰影が見つかります。「異型腺腫様過形成」は、肺癌のタイプのひとつ「腺癌」と鑑別がつきにくく、また、将来癌になるかもしれないが、癌にならないかもしれないという病態のため、経過観察が必要となります。

関連リンク

表:肺がんの疑いを調べる検査(スクリーニング検査)のまとめ

※横スクロールにて全体をご確認いただけます。

胸部X線検査
【どんな検査?】
肺野部のがんを発見するのに有効な画像検査。
最も手軽ないわゆるレントゲン検査でX線を使ってモノクロの平面写真を撮影する。
黒い肺に白い陰影が写っていると、がんの可能性がある
【この検査の弱点】
  • 肺門部は臓器が重なっていて死角が多い
    写りにくい場所:骨の重なっている場所、肺の上部(肺尖)、心臓の周囲、肺の下部
  • 他の病気も陰影として写る
    例:肺結核、肺炎、肺の良性腫瘍、じん肺、肺真菌症(はいしんきんしょう)、心不全など
喀痰細胞診
【どんな検査?】
痰を採取して顕微鏡で調べ、がん細胞が含まれているかを調べる検査。
胸部X線検査で見つけることが難しい肺門部のがんを発見するのに有効。
【この検査の判定方法】
  • AからEまでの5段階で判定
  • D判定で要精密検査。がん細胞が見つかればE判定
胸部CT検査
【どんな検査?】
X線とコンピューターを組み合わせた検査。
X線を使って胸を輪切りにした断層写真を撮影し、コンピューターで画像を作成。
胸部X線検査より精度が高く、小さな病変でも見つけることができる。
【この検査の特徴】
  • 肺がん以外のさまざまな病気も見つけることができる
  • 肺がんなのかそれ以外の病気なのかの鑑別がつきにくい

「肺がんの疑い」でも治療が必要ないことも。精密検査を受けましょう

健康診断や肺がん検診で胸に異常な影が見つかった場合には、「要精密検査」と判断されますが、この段階の「がんの疑い」は、がんである可能性もあれば、治療を必要としない体の変化の可能性もあります。ですから、精密検査を受けても「異状なし」と診断されることも少なくありません。「要精密検査」と判断されても悲観せず、しっかりと精密検査を受けましょう。
精密検査を受ける場合は、まずはかかりつけ医に相談し専門医のいる病院を紹介してもらうと良いでしょう。かかりつけ医がいない場合は、検査を受けた検診センターや呼吸器専門医など医療機関に相談しましょう。

参考文献

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