ひどい寝汗(盗汗)はなぜ?
考えられる原因と対策

監修 愛知県がんセンター 病院長 
山本 一仁 先生

ひどい寝汗に注意!身体の異変を知らせるサインかも?

汗には体温を調節する働きがあり、睡眠中も起床時までに多少の汗をかいています。しかし、あまりにも量が多い寝汗をかいた場合には寝苦しさを感じ、睡眠の質の低下も考えられます。
ひどい寝汗の原因が思い当たらない場合には、何らかの病気が原因になっている可能性も考えられます。病院を受診して、原因を明らかにしたうえで、適切に対処することが大切です。

ひどい寝汗の原因

過度なストレスによって、交感神経と副交感神経の切り替えがうまく行かず、自律神経の乱れが生じ、睡眠中の体温調整が困難になり、ひどい寝汗をかくことが考えられます。
また、ホルモンバランスの乱れも原因として考えられます。たとえば、加齢や閉経によってホルモンバランスが乱れ、さまざまな症状があらわれる更年期障害の症状の1つに多汗があります。就寝中に多汗があらわれた場合には、ひどい寝汗をかくことになります。
女性のPMS(月経前症候群)にもホルモンが関連しています。排卵をはさんで変動する女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の影響で生じるPMSによっても、ひどい寝汗がみられる場合があります。個人差はありますが、この場合には、生理が始まりしばらくすると、症状が改善されてくることが多いとされます。この他にも、室温や湿度といった睡眠環境による寝汗も考えられます。
しかし、とくに思い当たることがなく、ひどい寝汗がみられるようであれば、自律神経や、甲状腺、感染症などの何らかの病気による寝汗である可能性も否定できません。

盗汗とは

着替えが必要になるほどのひどい寝汗を「盗汗」と呼ぶことがあります。
盗汗は結核などの感染症やがんといった消耗性疾患の症状としてみられる場合が多いとされているため、気になる汗のかき方をする場合には、早めに病院を受診しましょう。

日常生活で寝汗が気になるときの対策

日常生活でできる寝汗の対策としては、ストレスをできるだけ減らす、生活のリズムを整えるといったことで、自律神経への影響を軽減することや、寝るときの環境を改善するために室温や湿度を調節し、寝間着は季節に合った適切なものを選ぶといったことが考えられます。
心当たりがないのに、ひどい寝汗があるときには、何らかの病気の可能性を考えて、早めの受診を心がけましょう。

ひどい寝汗で考えられる主な病気の症状と特徴

通常、体温調節や、精神的な緊張・ストレスによって汗をかきますが、多汗症は、その際に大量の汗をかき、それによって日常生活や社会生活に支障をきたしてしまう病気です。はっきりとした原因がわからない原発性多汗症と、感染症、内分泌代謝異常、神経疾患など、別の病気や外傷、腫瘍などが原因で起きている続発性多汗症があります。また、 全身の汗が増加するものと、手のひら、足の裏、脇の下などの特定の部位の汗が増加するものがあります。

甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、甲状腺機能が亢進した状態になる病気です。バセドウ病が代表的なものになります。甲状腺ホルモンは全身の代謝を調節するホルモンであり、過剰な分泌によって全身の代謝が亢進されます。そのため、発汗が過剰になり、大量の汗をかくようになります。

女性では、閉経に伴って卵巣の働きが低下し、エストロゲンの分泌が急激に減ることによってホルモンバランスが乱れ、さまざまな症状があらわれます。人によって症状はさまざまですが、自律神経の乱れによる動悸や息切れ、のぼせ、ほてり、発汗異常などのほか、頭痛や腰痛、肩凝りなど、多岐にわたります。この発汗異常によりひどい寝汗があらわれる場合があります。

自律神経は、活動時や昼間にはたらく交感神経と、安静時や夜間にはたらく副交感神経からなりたちます。これらの2つの神経がバランスよく切り替わることで、循環器、消化器、呼吸器などの活動が調整されています。このバランスが失われると自律神経の乱れが生じます。不規則な生活やストレスが原因と考えられ、全身にさまざまな影響があらわれます。

リンパ球ががん化し、増殖してしまう病気です。このリンパ腫細胞から生じる、炎症を引き起こす物質によって、リンパ腫に特徴的な症状である盗汗がみられるようになります。

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