リンパ腫の症状

監修 愛知県がんセンター 病院長 
山本 一仁 先生

Q. リンパ腫になると、どのような症状があらわれますか?

A. リンパ腫の症状は、リンパ腫細胞が腫れることによる症状と、リンパ腫細胞から出てくる物質により生じる症状の2つに大きくわけられます。リンパ腫細胞による腫れは、頸部やわきの下、鼠径部、腹部、骨盤部などのリンパ節のはれとしてみられることが多く、そのほかに扁桃、胸腺、脾臓などのリンパ組織、さらにリンパ外組織に発生することもあります。このはれができた部位によっては、痛みが出たり、見た目のふくらみができたりします。リンパ腫細胞から出てくる物質によって「B症状」といわれる発熱・体重の減少・盗汗(とうかん:激しい寝汗)といった、全身的な症状がみられる場合があります。

リンパ腫の多くはリンパ節やリンパ組織で発生します。しかし、リンパ球は病原体や異物の侵入から体を守る働きを持ち、血液中や全身のリンパ節や臓器に存在するため、脳神経、目、鼻腔、副鼻腔、咽頭、唾液腺、甲状腺、乳腺、肺、縦隔、胸膜、肝臓、胃、小腸、大腸、骨、精巣、卵巣、皮膚など、リンパ組織以外のさまざまな部位でも発生する可能性があります(図)。

リンパ系組織とリンパ外組織のはれの発生する場所を記載した全身図

●B症状

リンパ腫による激しい寝汗

盗汗(激しい寝汗):寝具(掛け布団、シーツなど)を替えなければならないほどの汗をかくことがあります。

リンパ腫による体重減少

体重減少:診断前6カ月以内に、通常の体重の10%を超える原因不明の体重減少がみられる場合があります。

リンパ腫による発熱

発熱:38℃をこえる原因不明の発熱を起こすことがあります。

●リンパ節の中でリンパ腫細胞が増殖している場合

リンパ腫細胞は、リンパ節以外でも増殖し、その場所によって次のようなさまざまな症状を引き起こすことがあります。
のどでは違和感や息苦しさ、食事のむせ、誤嚥、窒息があらわれ、くびではしこり、呼吸困難、痛み、窒息などがみられます。鎖骨ではその周りにしこりができたり、腕のむくみ、痛み、しびれがみられたりします。縦隔とよばれる左右の肺の間では呼吸困難、せき、顔面と腕の腫れ(上大静脈症候群)がみられます。わきの下では、しこり、脇が閉まらない、腕のはれ、痛み、しびれがみられます。肺門とよばれる肺の入り口の気管支では呼吸困難、せき、肺炎、無気肺がみられます。ひじでは、周りにしこりができたり、運動が制限されたり、痛みがあらわれたりまします。脾臓では、腹痛、背部痛があらわれ、骨盤の一部である腸骨では足のむくみ、痛み、しびれがみられ、歩行が困難になったりします。傍大動脈では、腹痛、背部痛、水賢症による背中の痛み、腎不全、食欲低下、便秘、腸間膜無症状がみられます。脚の付け根では、しこり、足のむくみ、痛み、しびれがみられ、歩行が困難になったりします。ひざでは、ひざの裏にしこりができ、下腿のむくみ、痛み、しびれがあらわれ、歩行が困難になることがあります。

リンパ腫 リンパ節の中でリンパ腫細胞が増殖している場合

●リンパ節以外でリンパ腫細胞が増殖している場合

脳・せき髓液では、頭痛、精神症状、けいれん、麻痺があらわれます。目では視覚障害、視力低下、鼻では鼻づまり、中耳炎、頭痛、副鼻腔炎があらわれます。甲状腺ではしこり、呼吸困難がみられ、気管支では呼吸困難、せき、肺炎、無気肺がみられます。胃では食欲低下、上腹部痛、血便、腹膜炎がみられます。精巣・卵巣では腫れ、痛み、中枢浸潤があらわれます。大腸では下痢、便秘、腸閉塞、腹膜炎、血便がみられ、小腸ではこれらに加えて消化不良がみられます。骨髓では血球減少があらわれます。皮膚では皮疹、腫瘤、出血、感染がみられます。

リンパ節以外でリンパ腫細胞が増殖している場合
医師からのメッセージ
気になる症状があらわれはじめたら

リンパ腫は病型によって進行の速度や治療の方法もさまざまです。症状が悪化する前に治療が開始できるように、気になる症状がある方は、そのままにしないことが大切です。ぜひ、医療機関を受診しましょう。

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