監修 愛知県がんセンター 病院長
山本 一仁 先生
リンパ球の働きと種類
ヒトの血液は液体成分と細胞成分に分けられます。細胞成分は血球成分とも呼ばれ、酸素を運ぶ赤血球や、止血のために働く血小板、そして、免疫の役割を担っている白血球が含まれます。
リンパ球は、この白血球の一つで、NK(ナチュラルキラー)細胞、T細胞、B細胞、形質細胞に分かれています。
NK細胞は、常に体内をめぐり、侵入してきた病原体を攻撃します。
T細胞は病原体の侵入に応じて働き、病原体を攻撃します。
B細胞はT細胞の指令などによって活性化して形質細胞となり、抗体を作り出す働きをします。
これらの細胞は、造血幹細胞からリンパ系前駆細胞を経て、それぞれの細胞に分化して作られています。
リンパ組織について
リンパ球が存在する組織をリンパ組織といい、骨髄、胸腺、リンパ節、扁桃腺、脾臓などがあります。
このうち、骨髄、胸腺といったリンパ球が作られている組織を一次リンパ組織と呼びます。一方、リンパ球が免疫の役割を果たす組織を二次リンパ組織と呼び、リンパ節、扁桃腺、脾臓などが含まれます。
リンパ球は、全身に約500個あるリンパ組織をめぐりながら、病原体や異物の侵入に備えています。
リンパ腫とは
リンパ球ががん化して増殖してしまう病気をリンパ腫といいます。通常、リンパ腫とは、リンパ腫のことを指します。リンパ組織は全身に存在しており、リンパ腫が進行すると、全身の臓器に広がるおそれがあります。
2019年に新たに診断されたリンパ腫の患者さんは36,638例※(男性19,311例、女性17,325例)1)でした。2000年以降の罹患数をみると、増加傾向にあることがわかります2)。
リンパ腫の種類
リンパ腫の種類(病型といいます)には、大きく分類して「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」があります。日本人では「非ホジキンリンパ腫」が90%以上を占めています。
ホジキンリンパ腫には、「ホジキン細胞」などの特徴的な細胞がみられ、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫と、古典的ホジキンリンパ腫に分類されます。
非ホジキンリンパ腫は、ホジキン細胞などの特徴的な細胞を持たないリンパ腫すべてを指し、リンパ球のうち、どの細胞ががん化したのかによって、Bリンパ球(B細胞)由来のB細胞性、Tリンパ球(T細胞)由来のT細胞性、NK細胞性に分類されます。その数は70種類以上に上ります。
リンパ腫の症状
リンパ腫の初期には、リンパ節の多い部分で、痛みのないしこりがみられます。このしこりが、数週から数カ月にわたって大きくなり続け、リンパ腫が広がって病状が進むと、さまざまな全身的な症状があらわれるようになります。また、リンパ腫がほかの臓器や器官に広がると、広がった先によって異なる、特有の症状がみられるようになります。