乳がんの原因
~先生からのメッセージ~
乳房にがん細胞が発生する直接の原因は、未だ解明されていません。
しかし、がん細胞が増殖していく過程には、女性ホルモンやある種のタンパク質が関わっていることが明らかになっています。そこに年齢や遺伝子の異常、女性ホルモンの状態などが関わって、がんが進展していきます。
がん細胞の増殖に関わる因子は、乳がんの治療薬にも関連します。より効果的な治療法が開発されるように、乳がんのメカニズムについてさらなる発見がなされることを切に望みます。
女性ホルモンによって増殖する乳がん
私たちの細胞は、「受容体」と呼ばれるタンパク質をその表面または内部に持っています。
受容体は細胞の外にある物質と結合してその物質が持っている命令を受け取り、細胞はその命令通りに機能します。
乳がん細胞の中には、女性ホルモンであるエストロゲン及びプロゲステロンに対する受容体を持っているものがあり、エストロゲンやプロゲステロンから「増殖せよ」という命令を受け取って増殖するタイプのものがあります。これをホルモン受容体陽性乳がんといいます。
ホルモン受容体の有無はがん細胞の分類であるサブタイプにも関わっており、治療方針を決定する際の判断材料となります。
HER2というタンパク質によって増殖する乳がん
乳がん細胞の中には、表面にHER2というタンパク質を大量に持っているものがあります。このHER2というアンテナからの指令で増殖するタイプのものが、HER2陽性乳がんです。
このタイプの乳がんには、HER2による指令が伝わるのを防ぐ作用を持ったお薬が効果を発揮します。
乳がん発症に関与するその他の因子
初潮が早いことや閉経が遅いこと、出産・授乳経験がないことなどは、エストロゲンの分泌過剰につながるため乳がんの発症リスクを高めます。また同様に、ピルの服用など女性ホルモンを補充する治療も乳がんの発症に関わります。