“生活の質”を重視した化学療法
~先生からのメッセージ~
手術後の化学療法では、がんに対する効果を高めるために複数の抗がん剤を組み合わせて治療が行われます。しかし、そうすることで、患者さんの負担も大きくなるという問題がありました。
そこで近年では、本当に必要なお薬だけを使って、治療効果をなるべく保ちながら患者さんの負担は抑える、という生活の質(Quality of Life:QOL)を重視した治療が注目されています。
そのような治療を実現するためにHER2陽性乳がんなどのサブタイプにおいて近年研究が進められている、de-escalationという考え方をご紹介します。
抗がん剤のde-escalationの例
de-escalationとは、以下の例のように、お薬を減らしながら治療を続ける方法です。
実際に、HER2陽性乳がん患者さんを対象にこのような治療をした研究1)も行われています。この研究を行った医師たちは、de-escalationについて「患者さんの生活の質の維持と治療成績の両立を可能にする」ものであると述べています。
de-escalationに決まった日本語訳はありませんが、あえて訳すとすれば「段階的に減らすこと」でしょうか。お薬を減らすことだけでなく、再発リスクに応じて治療内容を変える、がんのタイプに応じてお薬を変えるなど過剰な治療を回避して患者さんの負担をなるべく抑えることが、de-escalationの考え方です。
過剰な治療はしない、という考え方は、患者さんの気持ちを楽にしてくれるのではないでしょうか。また、治療費の面でもメリットが期待できます。
今後さらに研究が進めば、より効果が高く、より患者さんの負担が少ない治療法が開発されることでしょう。