乳がんと診断された乳がんと診断された

乳がんの薬物療法
②ホルモン療法と副作用
乳がんの薬物療法
②ホルモン療法と副作用

~先生からのメッセージ~

乳がんの中には、女性ホルモンの一種であるエストロゲンによって増殖するタイプのものがあります。サブタイプ上は「ホルモン受容体陽性」というカテゴリに属しますが、ホルモン療法は、このようなタイプの乳がんに有効な治療法です。
エストロゲンは閉経の前後で体内での作られ方が異なるため、お薬も閉経前後で異なる作用のものを使用することが特徴です。
また治療期間が数年に及ぶため、副作用と上手に付き合いながら続けていく必要があります。

なぜホルモン療法をするの?

ホルモン受容体陽性乳がんに対し、がん細胞の増殖を抑えることが目的です。術後のホルモン療法によって、再発を最大で半分ほどに減らすことが期待できます1)。また転移がんにおいては、生存期間を延長することがわかっています。

1)参考:日本乳癌学会編: 患者さんのための乳がん診療ガイドライン2019年版, 金原出版, 2019, p180

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手術前に行うホルモン療法

術前ホルモン療法は、ホルモン受容体陽性乳がんにおいて、しこりが大きい場合に、がんを小さくして取りやすくしたり、切除範囲を小さくしたりするために行われます。診断時には乳房温存手術が難しい場合でも、術前ホルモン療法によってがんが小さくなれば、温存が可能になることがあります。
ただし閉経前乳がんに対する術前ホルモン療法の研究はまだ少ないため、実際の治療では術前ホルモン療法の対象となるのは閉経後乳がんのみです2)

2)参考:日本乳癌学会編: 患者さんのための乳がん診療ガイドライン2019年版, 金原出版, 2019, p85

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手術後に行うホルモン療法

ホルモン受容体陽性のがん細胞の増殖を抑え、術後の再発を予防する目的で行います。お薬を5年間にわたって服用することが一般的ですが、最近では、手術から5年以上経過してから再発する場合があることがわかったため、10年間のホルモン療法が勧められることもあります3)
なお、閉経前乳がんの術後ホルモン療法で用いられるLH-RHアゴニスト製剤(エストロゲンの産生を抑えるお薬)は卵巣の機能を弱めて生理を止める注射薬です。治療期間中は、指示された間隔で通院し、お腹の皮下に注射を受けます。

3)参考:日本乳癌学会編: 患者さんのための乳がん診療ガイドライン2019年版, 金原出版, 2019, p184

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転移したがんに行うホルモン療法

ホルモン受容体陽性のがん細胞の増殖を抑えるために行います。
閉経前は、注射薬であるLH-RHアゴニスト製剤と、エストロゲンの働きを抑える内服薬の抗エストロゲン薬を併用します。転移がんへのホルモン療法は、効果が続いている限りは同じ治療を続けることが特徴です。効果がなくなったら、お薬を変更していきます。
閉経後は、アロマターゼ阻害薬(エストロゲンの産生を抑えるお薬)や抗エストロゲン薬、がん細胞のエストロゲン受容体を分解するお薬を使用します。

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ホルモン療法で用いられる薬剤

ホルモン療法には2つの方向性があります。一つは体内のエストロゲンを減らすこと、もう一つは乳がん細胞のエストロゲン受容体とエストロゲンの結合を邪魔してエストロゲンが働かないようにすることであり、それぞれの目的に応じたお薬を組み合わせて治療を行います。
また、閉経前後で使用できるお薬が異なります。

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ホルモン療法の副作用

ほてりやのぼせを感じるホットフラッシュ、性器出血など生殖器に関する症状、骨密度の低下が代表的な副作用です。また、気分の落ち込みや不眠などこころの症状があらわれることもあります。
ホルモン療法は、長期にわたって継続することが必要な治療法です。継続するためには、副作用と上手く付き合っていくことが大切です。
辛い症状はがまんしすぎず、医師や看護師、薬剤師にご相談ください。

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このページの監修をしている先生

坂井 威彦 先生

がん研究会有明病院
乳腺センター 乳腺外科 副部長

原 文堅 先生

がん研究会有明病院
乳腺センター 乳腺内科 副部長