乳房温存手術
~先生からのメッセージ~
乳房温存手術とは、がんを含めた乳房を部分的に切除し、正常な乳房を残す手術法です。術後に放射線治療を組み合わせることで、乳房を全部取る場合(乳房全切除術)と治療成績が同等であることがわかっています1)。
乳房温存手術が適応されるためには一定の基準を満たす必要がありますが、もしご自分が条件に当てはまるのであれば、メリットとデメリットをよく検討したうえで、選択肢に入れてもよいでしょう。
乳房温存療法の適応条件
ステージ0~Ⅱ、かつ術後の放射線治療が可能で、患者さんが温存を希望することが適応の条件です2)。
- 美容的な仕上がりに懸念がある場合は適応となりません。
- ステージ0~Ⅱであっても乳房の広い範囲にがんが広がっている場合は適応となりません。
- 術前に薬物療法を行い、腫瘍を小さくすることで温存が可能になる場合があります。
手術方法
がんが進展していると診断された範囲から1㎝程度のマージンを取って、乳房を部分切除します。
メリット | 自分の乳房を残すことができる 侵襲が少ない |
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デメリット | 残っている乳房に再発する可能性がある 放射線照射に通院が必要 |
選択や決定に迷ったときのヒント
乳房温存療法が適応となるということは、「いまのがんが発生している部位や大きさから、乳房を部分的に切除することでがんが取り除ける」と判断された状態です4)。
形をきれいに保つことはできるの?
乳房温存療法は、乳房内でのがんの再発を抑えながら、同時に見た目の美しさを保つことを目的とした治療法です5)。近年では、がん切除の効果を担保しながら、見た目の美しさも実現するという「オンコプラスティックサージャリー」という考え方が普及していて、切除した部分を乳房以外の部分の組織で補うことも可能になっています6)。
がんが残ってしまったり、再発することはない?
目に見えるがんを手術で取り除いても、小さながん細胞が残っている可能性があります。そのため、乳房温存療法の後は、がん細胞の根絶を目的に放射線治療を行います。再発のリスクをゼロにすることは難しいものですが、術後の放射線療法を行うことで、全切除した場合と比べて、その後の生存率に差がないことが複数の臨床試験で確認されています7)。