乳がんと診断された乳がんと診断された

乳がんの治療
~治療の流れとステージ・サブタイプ別の治療法~
乳がんの治療
~治療の流れとステージ・サブタイプ別の治療法~

治療の全体像

~先生からのメッセージ~

ここでは、ステージごとの治療内容をご紹介します。
実際は、詳細ながんの状態や患者さんの希望によって多少の違いはありますので、ここでの解説は知識として持っておき、それとご自分の状況を組み合わせて目の前の治療を考えるとよいでしょう。

ステージ0(非浸潤がん)

ステージ0の治療についてはこちらをご覧ください。

ステージⅠ~Ⅱ

治療は、局所治療(手術、放射線治療)と全身治療(薬物療法)を組み合わせて行われます1)
乳がんは、比較的腫瘍が小さいうちから、全身にがん細胞が流れることが知られています2)。手術でがんをすべてとり切ったと思っていても他の臓器に再発してくるのは、手術をした時点で乳房外に流れてしまっていたがん細胞が、何年かののちに増殖してくるからなのです。ステージが高いほど再発率が高くなるのは、がんのサイズや広がり方が大きければ大きいほど、がん細胞が血管やリンパ管に流れ込む確率が高くなるためです。腋窩リンパ節への転移は、周囲の血管・リンパ管に流れ込む乳がん細胞の性質を最もよくあらわしたものです。

乳がんのステージⅠ~Ⅱ

また、全身に流れ出たがん細胞が転移(乳房以外の場所で増殖すること)するかどうかは、がんの性質によっても大きく異なります。少量のがん細胞でも短期間で再発する場合もあれば、患者さん自身の免疫力等で排除されてしまい再発しない場合もあります。
このように乳がんの性質は一様ではないことがしられ、その性質を大きく4つのサブタイプに分けて治療方針を決めるのが一般的です。
がんの進行度(ステージ)と性質(サブタイプ)を総合的に評価し、局所治療、全身治療をどの順番でどのように組み合わせるかを考えて治療が行われます。

手術が先に行われる場合

しこりが小さく、リンパ節転移がない場合は、基本的に手術が先に行われます。まずはがんを取り除き、そこから病理診断で得られる情報によって、薬物療法や放射線療法といった追加治療の必要性を検討します。

乳がんで手術が先に行われる場合
薬物療法が先に行われる場合

しこりが大きい、リンパ節転移がある、化学療法が効きやすいサブタイプ(HER2陽性乳がん、トリプルネガティブ乳がん)といった場合は、手術を先に行ったとしても、術後に再発予防のための薬物療法の追加が推奨されます。このような患者さんには薬物療法を手術の先に行う術前薬物療法が追加されることがあります。術前薬物療法により、しこりのサイズが小さくなり乳房温存手術が可能になる、リンパ節転移の切除範囲を狭くすることができるなど、手術による患者さんの体への負担を抑えることが期待できます。
また、トリプルネガティブ乳がんなど一部のサブタイプでは、術前の抗がん剤治療によってがん細胞が消失するとその後の経過も良好であるという研究結果が発表されており3)、術前化学療法にはがんを小さくする以外の意義も確認されています。

乳がんで薬物療法が先に行われる場合

1)日本乳癌学会編:患者さんのための乳がん診療ガイドライン2019年版,
金原出版, 2019, p79-83

2)Hellman S.: J Clin Oncol.1994;12(10):2229-34.

3)Spring LM, et al.: Clin Cancer Res. 2020;26(12):2838-2848.

ステージⅢA

治療の流れや内容はステージⅠ・Ⅱと同様ですが、基本的に術前薬物療法の実施が選択されます。

ステージⅢB、ⅢC

乳房腫瘤が大きかったり、広範囲に乳房近傍のリンパ節へ転移があるため、そのまま手術を行ってもすべてのがんを摘出することは難しい段階です。
そのため薬物療法でがん細胞をたたき、縮小させ、その後に手術や放射線治療で局所治療を行うのが基本的な流れです。

乳がんのステージⅢB、ⅢC

ステージⅣ

坂井先生・原先生からもっと詳しく 坂井先生・原先生からもっと詳しく

ステージごとの治療の流れを簡単にご紹介しました。実際は、個々の患者さんの状態や意向によって違う方法が選択される場合があるため、あくまでも一般的な基準としてご覧ください。例えば、しこりが2cm以下のステージⅠなのに、画像検査で乳房内にがんが広がっていると判断されるために乳房切除術を行う、などです。
医師は患者さんのがんの状態はもちろん、ご希望をなるべく考慮して最適・最善の治療方針を組み立てています。何か気になることやわからないことがあれば、遠慮せず医師や看護師に聞いてみてください。

コラム 患者さんの負担軽減を目指して

手術前・手術後の化学療法(抗がん剤による薬物療法)では、がん細胞を攻撃する力を強くするために、複数の抗がん剤を組み合わせて治療を行います。しかしそのような治療では、同時に副作用による患者さんの負担が大きくなることが課題です。
そのため近年では、患者さんの負担を抑えながらも治療効果をなるべく保つ方法についての研究が多く行われており、その一つにde-escalationという考え方があります。

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