乳がんの疑いがある乳がんの疑いがある

乳がんは遺伝する?
~遺伝性乳がんについて~
乳がんは遺伝する?
~遺伝性乳がんについて~

遺伝性乳がんと診断されたら?

~先生からのメッセージ~

すでに乳がんを発症している場合と発症していない場合で、治療法が異なります。
いずれも、将来のリスクを抑えて寿命を延ばすことを期待する予防的な治療ですが、乳房の切除や卵巣の摘出など、女性にとっては辛い選択になる可能性のあるものです。
担当の先生やご家族と一緒に、治療を受けることとご自分の希望のバランスをよく考えて、ご自分にとって最善の治療を選択していただければと思います。

すでに乳がんを発症している場合の治療法1)

反対側の乳房にがんができることを予防するために、反対側の乳房を全切除することも選択肢として提示されます。なおこの方法はこれまで自費診療で行うしかないものでしたが、令和2年4月より保険適用が認められています。
この予防的切除のメリットはHBOC患者さんの年齢や病状、そのほか多くの状況において変わってくるため、担当医、遺伝カウンセラーとよく相談しておくことが必要です。
乳房を残す選択をした場合には、がんの早期発見をめざして年1回のMRI検査等の画像診断を保険適用で受けることができます。

またHBOCは卵巣がんも発症しやすいため、予防的に卵管・卵巣を摘出することが推奨されます。これらの治療も令和2年4月より保険適用が認められました。

1)日本乳癌学会:遺伝性乳がん卵巣がん症候群の保険診療に関する手引き. 2020年4月1日

乳がんを発症していない場合の治療法2)

今後がんが発生したときにすぐ見つけられるように、25歳ごろから年に1回程度、MRIによる乳房の検査を行うことが推奨されています。
がん予防のために両方の乳房を全切除するという方法もありますが、生存率の改善効果ははっきりしないため、強く推奨はされていません。一方で卵管・卵巣の摘出は死亡リスクを下げることが明らかになっているため、卵巣がん発症リスクが高まる40歳ごろに向けて妊娠や出産の希望がなければ、卵管・卵巣をすべて摘出することが強く推奨されています3)。しかし予防的な乳房切除、卵管卵巣摘出は、いずれも保険適用が認められていません。

2)厚生労働科学研究がん対策推進総合研究事業
「わが国における遺伝性乳癌卵巣癌の臨床遺伝学的特徴の
解明と遺伝子情報を用いた生命予後の改善に関する研究」班編:
遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)診療の手引き2017年版

3)日本婦人科腫瘍学会編:卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2020年版,金原出版,2020,CQ23

すでに乳がんを発症している 乳がんを発症していない
健康な乳房の切除 検討を強く推奨。保険診療内で可能。
両方の乳房の切除 弱く推奨。全額自費診療。
卵管・卵巣摘出 推奨。保険診療内で可能。 強く推奨。全額自費診療。

日本乳癌学会:乳癌診療ガイドライン2018年版, 金原出版, 2018より作表

清水先生から、あなたへのメッセージ

健康な乳房や卵巣・卵管を切除・摘出するということは、どんな方にとっても辛い選択になることでしょう。ましてHBOCでは必ず将来がんを発症するわけではないので、医師からこのような治療を打診されたら、非常に迷うことと思います。
そのようなときは、乳がんの治療についてのガイドラインに目を通してみてはいかがでしょうか。ガイドラインには、国内外の研究から得られた治療についての知見が、効果の確からしさごとに紹介されています。患者さん向けのガイドラインも出版されていますので、医師の話の補助として読んでいただくことで、さまざまな選択肢をより客観的に吟味できるのではないかと思います。

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