卵巣がん

みんなのQ&A

監修 近畿大学医学部 産科婦人科学 教授 
松村 謙臣 先生

卵巣がんに関するみなさんからよくある質問に、わかりやすく回答しています。

卵巣がん みんなのQ&A

A.

食べすぎ・飲みすぎやガスだまりなど思い当たる原因がなければ、卵巣が腫れている可能性もあります。早めに受診しましょう。

お腹の張りは、ほとんどが腸内のガスだまりによるものです。しかし、女性であれば、卵巣に腫瘍ができて大きくなっているために、お腹の張りを感じている場合もあります。卵巣腫瘍には良性のものもありますが、悪性腫瘍の可能性もあります。婦人科を早めに受診しましょう。

A.

子宮内膜症の可能性もあります。子宮内膜症は卵巣がん発生との関連があるので、婦人科を受診して相談しましょう。

子宮内膜症は、子宮の内面を覆っている組織が、何らかの原因で他の場所(卵巣、腹膜、膀胱、直腸、肺など)に発生するものです。生理のある女性なら誰でもなる可能性のある病気で、不妊症と関連すると言われています。また卵巣の子宮内膜症(チョコレート嚢胞)と診断された数ヶ月〜数年後に卵巣がんが発生する場合もあります。したがって、一度診察を受けることをおすすめします。

A.

直接の原因は不明です。排卵回数の多さが危険因子とされています。

詳しくは、「卵巣がんはなぜ起こるの?」をご参照ください。

A.

初期症状はほとんどありません。進行すると、お腹の張りや下腹部のしこりなどがあらわれます。

詳しくは、「卵巣がんの症状は?」をご参照ください。

A.

自覚症状がほぼないため、早期発見の難しいがんです。見つかったときには、すでに進行してしまっていることが多くあります。

卵巣は骨盤の奥にあるため、少し腫れているくらいでは症状として表れてきません。自分でお腹の張りなどを感じるころには、他の部位に転移しているほどにがんが進行してしまっていることも、決して珍しくはありません。

A.

卵巣嚢腫は良性腫瘍ですが、一定期間の後にがんが発生する場合があります。

卵巣嚢腫は、液体の入った袋状の病変が卵巣にできるもので、様々な年代の女性に多くみられる良性腫瘍です。大きくなってくると下腹部の鈍痛や頻尿などの圧迫症状を来たす場合があるので、手術で摘出する必要があります。また、茎捻転(卵巣が子宮とつながっている部分がねじれること)が起きると急激な腹痛を生じ、緊急手術が必要となります。チョコレート嚢胞は卵巣嚢腫の一種ですが、月経時の下腹痛や月経時以外でも腹痛を来たすため、手術やホルモン剤による治療が必要となることが多くあります。

一般的には、卵巣嚢腫と診断されている卵巣に卵巣がんが発生することはきわめてまれです。真に良性の卵巣嚢腫の腫瘍細胞が徐々に変化して卵巣がんとなるかどうか、そして、もしそのようなことが起きるとすればその頻度はどうであるかについてはよくわかっていません。これは、卵巣が体内にあるために、細胞や組織の変化を調べるような研究ができないためです。しかし、まれに、卵巣嚢腫と診断されていた卵巣にがんが発生することがあります。その場合、がん細胞が増殖して画像検査でがんと診断される大きさになるまでは何年もかかることを考慮したうえで後から振り返ると、その卵巣嚢腫を診断した時点からがん細胞が存在していたことが類推されるケースが多いです。
卵巣嚢腫がある場合は、婦人科のかかりつけ医の指示に従い、状態に応じて適切な治療を受けられるようにするとよいでしょう。

A.

子宮内膜症の一種であるチョコレート嚢胞から、卵巣がんが発生する可能性があります。

チョコレート嚢胞と診断されていても、数ヶ月後〜数年後に、1%程度の確率で、嚢胞の中にがんが発生する場合があります1-4)。そのような現象が生じるのは、チョコレート嚢胞の内側の細胞ががん細胞に変化するためなのか、あるいは最初から含まれていたがん細胞が増殖するためなのかは、よくわかっていません。チョコレート嚢胞があると診断された場合は、指示どおりに婦人科を受診するようにしましょう。

  1. 1)Brinton LA, et al.: Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2005;14:2929-35.
  2. 2)小林浩:日産婦会誌 2005;57:N351-3.
  3. 3)小西郁生ほか.:臨床婦人科産科 2006;60:134-9.
  4. 4)Kobayashi H, et al.:Ont J Gynecol Cancer 2007;17:37-43.

A.

両親のどちらかに卵巣がんを引き起こすような遺伝上の特徴がある場合、その特徴は性別に関わりなく50%の確率で子供に受け継がれます。

下記の図のとおり、卵巣がんを引き起こす遺伝上の特徴は50%の確率で子供に継承されます。

親世代の変異ありの遺伝子が子世代に継承される確率をイラストで解説

A.

ヒトの細胞の核の中には23対、46本の染色体があり、それぞれの染色体の中には、DNAが細かく折りたたまれています。DNAは遺伝子に書かれた遺伝情報で構成されており、生まれつき、一人一人で少しずつ違ったものになっています。この違いが「遺伝子の違い」であり、個人の特徴や体質の多様性の元となるものですが、特定の病気を引き起こすものである場合があります。

遺伝性乳がん・卵巣がんでは、BRCA1、BRCA2という遺伝子における違いが原因とされています。

前述の遺伝子の違いをイラストで解説

A.

一度にたくさんの遺伝子変異の有無を調べられる検査です。

がんは、細胞に様々な遺伝子変異が生じることによって発生します。また、もともと全身の細胞に遺伝子変異がある場合、さらに特定の臓器の細胞の同じ遺伝子に異常が加わることでがんが発生します(BRCA1/2遺伝子変異がある場合の卵巣がん・乳がんが代表的)。

がん遺伝子パネル検査は、切除したがんの一部や採血した血液を次世代シーケンサーと呼ばれる装置にかけ、100以上の遺伝子を同時に解析して異常のある遺伝子の有無を調べるものです。この検査の結果、特定の遺伝子変異に対して、それに合った分子標的治療薬を使うことができる場合があります。がん遺伝子パネル検査を受ける際は、遺伝性がんであることが分かる場合があること、検査の費用、新たな治療法がみつかる見込みなどについて、主治医から十分に説明を受けることが必要です。

A.

がんになる前に卵巣・卵管を摘出するリスク低減手術が推奨されます。

遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)では、卵巣がんの発生リスクや卵巣がんによる死亡率を減らすことが証明されているのは、予防的に両側の卵巣と卵管を切除する手術のみです。

予防的卵巣卵管切除術によって妊娠はできなくなりますが、HBOCにおいて卵巣がんの発生リスクが増加するのは40歳以後であるため、手術の時期は40歳頃、あるいはそれ以前であっても出産を終えた頃に、腹腔鏡下で行われます。手術後は、乳がんにかかっていない方では女性ホルモンの投薬を受けます。

手術を希望しない場合、定期的に超音波検査や血液検査を行う場合もありますが、卵巣がんによる死亡率を減らすものとしての有効性は証明されていません1)。乳がんに関しては、予防的乳腺切除術を行う場合もありますが、早期発見するための定期的な検査も有用です。

このように、HBOCは正しく理解し、必要な検査と手術を受けることで、妊娠・出産をしながら健康に一生過ごすことが可能です。

  1. 1)厚生労働科学研究がん対策推進総合研究事業
    「わが国における遺伝性乳癌卵巣癌の臨床遺伝学的特徴の解明と遺伝子情報を用いた
    生命予後の改善に関する研究」班編: 遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)診療の手引き2017年版

A.

どちらの卵巣がんも、手術と抗がん剤による治療後に、再発予防のために分子標的治療薬を維持療法として長期間使用する場合があります。

進行がんであれば、HBOCであるか否かの検査を保険診療で受けることができます。HBOCの卵巣がんは、高異型度漿液性がんというタイプであることがほとんどで、このタイプの卵巣がんの多くはお腹の中にがん細胞が散らばった進行がんとして診断されます。そのためHBOCの卵巣がんでは、半年間ほど、通常の卵巣がんと同様に手術と抗がん剤治療の組み合わせによる治療を行った後、再発を予防するために分子標的治療薬の投与が行われます。

A.

妊娠中の卵巣嚢腫などの卵巣腫瘍はほとんどが良性のもので、悪性腫瘍はごくまれです。

妊娠中の卵巣腫瘍は、子宮がまだ小さい妊娠初期に、内診や経腟エコー検査で見つかることがほとんどです。良性であっても、7cmを超える大きいものは、妊娠中や分娩後に茎捻転(卵巣が子宮とつながっている部分がねじれること)を起こして緊急手術が必要になったり、骨盤の中にはまりこんで難産の原因になったりするため、手術による摘出が行われます。

A.

がんが片方の卵巣にとどまり、ごく初期の段階では、がんがない方の卵巣を残して妊娠することが可能な場合があります。

妊娠の可能性(妊孕性)を残す治療が適応となるための条件は、下記の通りです。

  1. ①ステージⅠA期(がんが片方の卵巣内に留まっている)であること
  2. ②がんの顔つき(組織型)が漿液性がん、類内膜がん、粘液性がんのいずれかで、分化度(悪性度)は高分化型または中分化型であること
  3. ③Ⅰ期の上皮性境界悪性腫瘍

また妊孕性を残す治療を考慮する余地がある条件として、下記が定められています。(①かつ②、または③のみ、または④のみ)

  1. ①ステージⅠC期の一部(がんが片方の卵巣に留まり、被膜表面への浸潤または被膜破綻があるが、腹水にはがん細胞を認めない)を満たすこと
  2. ②組織型が漿液性がん、類内膜がん、粘液性がんのいずれかで、悪性度は高分化型または中分化型であること
  3. ③ステージⅠA期の明細胞がん
  4. ④Ⅱ期以上の上皮性境界悪性腫瘍

妊孕性を残す治療を行うには、患者さんが将来の妊娠・出産を強く希望し、さらに再発の可能性や長期にわたる経過観察の必要性をしっかり理解していること、そして担当医と信頼関係を築くことが重要です。妊娠を希望している場合は、治療前にご家族、そして医師や医療スタッフと十分に話し合う機会を持ちましょう。

※悪性と良性の中間の腫瘍。広がり方の分類は悪性腫瘍と同様
(「Q.境界悪性腫瘍と診断されました。がんとは違う病気なのでしょうか?」参照)

A.

がんの広がり方によって5年後の生存率は異なりますが、ごく初期段階の発見で、約9割の患者さんが完治します。

2015年の日本産科婦人科学会腫瘍委員会の報告1)によると、卵巣がんの広がり方ごとの5年生存率は下記のとおりです。

  1. Ⅰ期(がんが卵巣だけに留まっている状態):91.5%
  2. Ⅱ期(がんが骨盤内[子宮や卵管、直腸・膀胱の腹膜など]に広がっている状態):76.1%
  3. Ⅲ期(がんが骨盤腔を越えて上腹部の腹膜、大網や小腸、リンパ節などに転移している状態):46.9%
  4. Ⅳ期(がんが肝臓や肺などの遠くの臓器にまで転移している状態):31.3%

しかし、卵巣がんの半数は進行したⅢ期、Ⅳ期に発見されています。卵巣がんが早期に発見されるかどうかは、主にがんの顔つき(組織型)によります。

卵巣がんは再発を繰り返しながら、薬物療法を受けつつ生存する場合があります。5年後に生存していることは、必ずしも完治していることを意味しません。

  1. 1)日本産科婦人科学会 婦人科腫瘍委員会:日産婦誌;69(3):1171-1216, 2017

A.

がんの顔つき(組織型)によって、抗がん剤の効果が異なります。

卵巣がんの組織型には、主に漿液性がん、類内膜がん、粘液性がん、明細胞がんがあり、さらに漿液性がんは高異型度漿液性がんと低異型度漿液性がんにわかれています。

卵巣がんにおける組織型の割合を示した円グラフ。漿液性がん38.3%、類内膜がん16.7%、粘液性がん9.7%、明細胞がん23.0%、その他12.3%

日本産科婦人科学会 婦人科腫瘍委員会:日産婦誌;69(3):1171-1216, 2017 より作成

高異型度漿液性がんと類内膜がんは、抗がん剤が効きやすいタイプのがんです。反対に抗がん剤が効きづらいのは、粘液性がん、低異型度漿液性がん、日本人に多い明細胞がんです。

A.

良性腫瘍と悪性腫瘍の中間にある腫瘍、ということです。がんほどに悪性度は高くありませんが、良性腫瘍とまではいえないものです。

基本的に治る見込みの高いものですが、まれにがんのように再発・転移を繰り返すものがあるため、基本的には卵巣がんに準じた治療(手術と術後の抗がん剤治療)を行います。
なお境界悪性腫瘍は治療から長年経って再発することが特徴といわれており、20年以上経ってから再発した例もあります1)。そのため、長期にわたる経過観察が推奨されています。

  1. 1)Hopkins MO, et al.:Obstet gynecol 1987;70:923-929

A.

初回手術でわかったがんの広がりを表しています。広がりの程度によって、大きく4つに分類されています。

詳しくは、「治療の全体像」をご参照ください。

A.

がんが卵巣・卵管内に留まっている状態です。この段階では、高い確率で完治を期待することができます。

子宮の構造をもとに卵巣がんステージⅠの状態を説明したイラスト

日本婦人科腫瘍学会編:患者さんとご家族のための子宮頸がん子宮体がん卵巣がん治療ガイドライン
第3版, 金原出版, 2023, p154

Ⅰ期は、さらにⅠA期、ⅠB期、ⅠC期の3つに分類されます。

ⅠA期

片方の卵巣・卵管に留まり、被膜表面への浸潤、被膜破綻が認められないもの。また腹水中にがん細胞が認められないもの

ⅠB期

両方の卵巣・卵管に留まり、被膜表面への浸潤、被膜破綻が認められないもの。また腹水中にがん細胞が認められないもの

ⅠC期

片方あるいは両方の卵巣・卵管に留まっているが、被膜表面への浸潤や被膜破綻が認められたり、腹水中にがん細胞が認められるもの

ⅠA・ⅠB期の治療

低異型度であれば手術後は経過観察のみです。
高異型度また組織型が明細胞がんである場合は手術後に薬物療法を行い、その後経過観察となります。

ⅠC期の治療

悪性度や組織型に関わらず、手術後に薬物療法を行います。

A.

がんが骨盤内(子宮や直腸・膀胱の腹膜など)に広がった状態です。

子宮の構造をもとに卵巣がんステージⅡの状態を説明したイラスト

日本婦人科腫瘍学会編:患者さんとご家族のための子宮頸がん子宮体がん卵巣がん治療ガイドライン
第3版, 金原出版, 2023, p154

Ⅱ期は、さらにⅡA期、ⅡB期に分類されます。

ⅡA期

子宮や、原発部位以外の卵巣、卵管へ進展しているもの

ⅡB期

子宮、卵巣、卵管以外の骨盤部腹腔内臓器(直腸、膀胱、膣など)へ進展しているもの

Ⅱ期の治療

最初の手術でがんの完全切除を目指し、その後、抗がん剤治療を行って経過観察となります。手術の際に残存腫瘍があると、再発しやすくなり、完治が難しくなります。最大残存腫瘍径が1cm以上の場合、薬物治療の後に再度手術を行ってできるだけ腫瘍を摘出し、術後は再び薬物治療を行います。

A.

がんが骨盤腔を超えて腹腔内播種(上腹部の腹膜、大網や小腸など)、ならびに/あるいは後腹膜リンパ節転移をみとめる状態です。

子宮の構造をもとに卵巣がんステージⅢの状態を説明したイラスト

日本婦人科腫瘍学会編:患者さんとご家族のための子宮頸がん子宮体がん卵巣がん治療ガイドライン
第3版, 金原出版, 2023, p154

Ⅲ期は、さらにⅢA1期、ⅢA2期、ⅢB期、ⅢC期に分類されます。

ⅢA1期

後腹膜リンパ節にのみ転移のあるもの

ⅢA2期

後腹膜リンパ節転移の有無にかかわらず、顕微鏡的播種を認めるもの

ⅢB期

後腹膜リンパ節転移の有無にかかわらず、顕微鏡的播種を認めるもの

ⅢC期

後腹膜リンパ節転移の有無にかかわらず、顕微鏡的播種を認めるもの

Ⅲ期の治療

最初の手術でがんを取り切ることは非常に難しい場合が多いです。最初は腹腔鏡でお腹の中を観察し、がんの広がりを調べて、組織を採取するだけにとどめることもあります。手術後は薬物療法による治療を行います。薬物療法では、抗がん剤による治療の他にも分子標的治療薬(血管新生阻害剤※1)による治療を行い、その後血管新生阻害剤を維持療法として用いることも多いです。
手術で取り切れないがんの大きさが1cm以上の場合、薬物療法の後に再度手術でできるだけがんを摘出し、術後は再び薬物療法を行います。
薬物療法では、抗がん剤による治療の他にも分子標的治療薬(血管新生阻害剤※1やDNA修復酵素阻害剤※2)による治療を行うことも多いです。

  1. ※1 がん細胞に栄養を与える血管が作られるのを阻害し、がん細胞の増殖を抑える薬
  2. ※2 がん細胞が自身のDNAを修復する酵素のはたらきを抑える薬

A.

がんが肝臓や肺などの遠くの臓器にまで転移している状態です。

子宮の構造をもとに卵巣がんステージⅣの状態を説明したイラスト

日本婦人科腫瘍学会編:患者さんとご家族のための子宮頸がん子宮体がん卵巣がん治療ガイドライン
第3版, 金原出版, 2023, p154

Ⅳ期は、さらにⅣA期、ⅣB期に分類されます。

ⅣA期

胸水中に悪性細胞を認めるもの

ⅣB期

腹腔内臓器(肝臓、脾臓)への実質転移のあるもの、あるいは腹腔外臓器(鼠径リンパ節や腹腔外リンパ節を含む)に転移のあるもの

Ⅳ期の治療

最初の手術でがんを取り切ることはほとんどできず、最初は腹腔鏡で観察するだけにとどまることも多いです。手術後は抗がん剤や血管新生阻害剤(「Q.卵巣がんのステージⅢとは、どのような状態なのでしょうか?」参照)による薬物療法が果たす役割が大きくなります。最初の手術で取り切れないがんの大きさが1cm以上の場合、薬物療法の後に再度手術でできるだけ腫瘍を摘出し、術後は再び薬物療法を行います。
薬物療法では、抗がん剤による治療の他にも血管新生阻害剤やDNA修復酵素阻害剤(「Q.卵巣がんのステージⅢとは、どのような状態なのでしょうか?」参照)による治療を行うことも多いです。

A.

卵巣がんでは半数以上の患者さんで再発がみられます。

再発とは、治療によって目に見える大きさのがんがなくなった後に、再びがんが現れることをいいます。卵巣がんの再発の多くは治療後2年以内にみられます1)
再発卵巣がんの治療について、詳しくは「再発卵巣がんに対する治療」をご覧ください。

  1. 1)日本婦人科腫瘍学会編:患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン 第3版, 金原出版, 2023, p185

A.

子宮は、卵巣がんが非常に転移しやすい臓器であるためです。

がんが体の中に残ってしまうことがないように、子宮を摘出します。なお将来妊娠を希望する場合は、いくつかの条件を満たせば、子宮を摘出せずに残すことが可能です(「Q.同じ卵巣がんでも、治療しやすいものとそうでないものがあるって聞いたのですが。」参照)

A.

卵巣がんの手術は基本的に開腹手術のため、約2週間の入院が必要です。

A.

手術では取り切れなかった腫瘍を根絶させるためです。取り切れなかった腫瘍が大きい場合は、手術後の化学療法で腫瘍を小さくしてから、再度手術で全摘出を目指すこともあります。

化学療法の内容について詳しくは、「薬物療法:抗がん剤による治療が標準的です」をご覧ください。

A.

代表的な治療法では、3週間に1度通院し、1回5時間程度かけて点滴を行います。

実際に点滴する際は、抗がん剤以外に吐き気止めやアレルギー予防のお薬も一緒に投与します。また点滴終了後に熱が出た場合の飲み薬が処方されることもありますので、医師・薬剤師の指示を守って服用するようにしましょう。
代表的な治療法であるタキサン系抗がん剤と白金製剤の併用療法では、主な副作用として、脱毛、手足のしびれ、筋肉痛・関節痛、注射部位の皮膚障害、アレルギー、白血球減少、吐き気・嘔吐、爪の変色や変形などがみられます。
患者さんの状態によっては、分子標的治療薬(血管新生阻害剤(「Q.卵巣がんのステージⅢとは、どのような状態なのでしょうか?」参照))が追加される場合もあります。血管新生阻害剤の主な副作用は出血、高血圧、疲労・倦怠感、口内炎、吐き気・嘔吐、貧血、下痢などです。
HBOCの場合は、DNA修復酵素阻害剤(「Q.卵巣がんのステージⅢとは、どのような状態なのでしょうか?」参照)による維持療法を行う場合があります。DNA修復酵素阻害剤の主な副作用は、吐き気、貧血、疲労・倦怠感などです。
副作用が辛い場合は、お薬の量を減らしたり、一時的に休薬するなどの対処法がありますので、医師に相談しましょう。
また化学療法の内容や投与スケジュールは、患者さんの状態によって変更される場合があります。

A.

小さながんがお腹の中に散らばっている腹膜播種がないかどうかを確認するためです。

卵巣がんの手術は腫瘍を取り去るために行われますが、同時にがんの広がり方を確認して、ステージを決定することも重要な目的です。腹膜播種が上腹部に認められる場合はステージⅢ期の進行がんとなります。

A.

手術前に進行がんであることが予想される場合は、手術だけでがんを取り去ることは難しいとされています。そのため、手術前に化学療法を行うことで腫瘍を小さくし、その後の手術での腫瘍摘出率を向上させるという治療が行われています。

術前化学療法の効果のイメージは、下図のとおりです。
卵巣がんの術前化学療法の効果のイメージ

日本婦人科腫瘍学会編:患者さんとご家族のための子宮頸がん子宮体がん卵巣がん治療ガイドライン
第3版, 金原出版, 2023, p160

術前化学療法で腫瘍を縮小することにより、大腸や小腸など他の臓器の切除をせずに済む、がんによる症状を改善して手術に耐えられる程度の体調を確保できる、などの効果が期待できます。術前化学療法の前に、腹腔内を観察してがんの広がりを調べて、がんの組織を採取するために、腹腔鏡下手術を行う場合もあります。

A.

更年期のような症状が出たり、脂質異常症や骨粗しょう症の危険性が高まります。女性ホルモンを補充するホルモン補充療法が、症状改善に有用だとされています。

女性ホルモンを分泌する卵巣を摘出すると、閉経と同じように女性ホルモンが減少し、心と体にさまざまな変化が生じます。中でも、のぼせやほてり、発汗などのホットフラッシュ、肩こり、腰痛、頭痛、性交痛、また抑うつや不安・イライラなどの更年期障害に似た症状が、卵巣欠落症状として知られています。また脂質異常症や骨粗しょう症になることが増えるため、心臓の病気になる危険性が増加したり骨折しやすくなるなど、将来の健康に対する影響も考えられます。
このような症状に対して有用とされるホルモン補充療法では、飲み薬、貼り薬、塗り薬のいずれかを希望に応じて使用することができますので、辛い症状がある場合は医師に相談してみましょう。

A.

術後に起きる可能性の高い腸閉塞、リンパ浮腫に備えることが必要です。

腸閉塞

腸閉塞とは、腸が何らかの原因でふさがってしまうことでさまざまな症状があらわれる病態で、イレウスともいいます。発症時期や主な症状、治療法にはさまざまな種類がありますので、詳しくは医師の説明を受けてください。

イレウスを確実に予防できる手段は、今のところありません。自宅では、自分の体をよく観察し、症状に応じて救急受診することが重要です(下図参照)。

また、バランスのとれた食事を腹七・八分目程度にゆっくり食べる、消化の悪いものは控えめにする、水分を十分にとる、便秘に気をつけるなど腸を守る食生活を送ることも大切です。

腸閉塞の症状をイラストで解説。お腹の張り、おなら・便がでない、吐き気・嘔吐、尿量の減少、疝痛。
リンパ浮腫

リンパ節を摘出したことにより、術後に浮腫(むくみ)があらわれるものです。予防法は特にないため、日常生活の中でできる対処法を行い、生活に支障のない状態を保つことが重要です。
下図は一般に考えられるリンパ浮腫への対処法ですが、自分に何が必要か、また詳しいやり方については、医師の指示を受けてください。

リンパ浮腫の対処法をイラストで解説。足を心臓より高い位置にして寝る、リンパドレナージ(マッサージ)、弾性着衣による圧迫療法、運動、清潔を保つ(感染予防)、肥満の解消

※リンパ液・血液の循環が悪い状態で感染を起こすと、蜂窩織炎(炎症によって皮下の組織にたんぱく質と水分がたまり、そこで固まってしまうこと)を起こす可能性があります。

A.

十分に体力が回復し、術後の傷の状態が安定すれば性交渉は可能です。

ただし、手術後は、性交に関わる合併症が認められることが多くあります。具体的には膣の乾燥、性交痛、満足度の低下など、また心理的には性行為に対する興味の低下などです。
性交渉を持ちたいという希望がある場合は、パートナーとよく話し合い、二人にとって無理のないやり方を探してみてはいかがでしょうか。

A.

がんは担当の医師だけでなく、他の医療職を含めたチーム体制で治療を行います。チームの中心は患者さんですから、気になることや悩みは自分だけで抱え込まず、そばにいるスタッフを頼ってください。

がん治療にあたるチームには、主治医以外には看護師、薬剤師、リハビリに関する専門職などが加わります。また心の問題を扱う精神科医や心療内科医、臨床心理士が加わる場合もあります。これらのスタッフが患者さんを中心に協働し、患者さんを支えていくことがチーム医療です。ですから何かサポートが必要なとき、不安や心配事があるときは、ぜひ周囲のスタッフに話してみてください。
また、「がん相談支援センター」を活用することもできます。「がん相談支援センター」は、全国のがん診療連携拠点病院などに設置されている、がんに関する相談窓口です。他の病院にかかっている場合でも、患者さんやご家族も含め無料での利用が可能です。がんの診断から治療、治療後の生活や社会復帰など、がん治療に関わるあらゆる疑問や不安をご相談いただけます。相談は面談のほか、電話やメールでも可能です。また、匿名での相談も受け付けています。

A.

がん相談支援センター(「Q.治療のことや症状のことなど、いろいろ話したいのですが相談相手がみつからなくて…」参照)では、活用できる助成金や支援制度のご紹介も行っています。社会保険の手続きなどについても相談することができますので、ぜひご活用ください。

A.

病気や治療のことをよく理解し、納得して治療にあたるために、セカンドオピニオンを利用するとよいでしょう。

セカンドオピニオンとは、診断や治療について、現在の主治医とは違う医療機関の医師に第二の意見を求めることです。転院することではありません。
セカンドオピニオンを受ける際には、まず主治医の意見(ファーストオピニオン)をきちんと理解できていること、その上で、なぜ自分がセカンドオピニオンを受けたいのかをしっかり考えることが重要です。
セカンドオピニオンを受け付けている医療機関がわからない、主治医にセカンドオピニオンのことを言い出しづらいなどの問題がある場合は、がん相談支援センター(「Q.治療のことや症状のことなど、いろいろ話したいのですが相談相手がみつからなくて…」参照)に相談してみるとよいでしょう。

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