監修 近畿大学医学部 産科婦人科学 教授
松村 謙臣 先生
卵巣がんはなぜ起こるの?
卵巣がんの直接の原因は不明ですが、排卵回数の多さが危険因子であると言われています1)。
また、卵巣がん全体の10~15%は遺伝によるものとされます2, 3)。
1)Casagrande JT, et al.: Lancet 2:170-173, 1979.
2)Hirasawa A, et al.: Oncotarget. 2017;8(68):112258-112267
3)Enomoto T, et al.: Int J Gynecol Cancer. 2019;29(6):1043-1049.
排卵回数が多くなる要因としては、出産経験がないことや、早い年齢での初潮、閉経が遅いこと、睡眠不足などがあります。排卵のたびに卵巣表面の組織には傷ができます。この傷が卵巣がんの発生と関連するとされており、そのため排卵回数が多いほどがんのリスクが高くなると考えられています4)。
そのほかには、肥満や子宮内膜症も卵巣がんの危険因子であることがわかっています。
また親・姉妹・いとこに卵巣がんや乳がんの患者さんがいる場合は、遺伝的に卵巣がんが生じやすい体質(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)の疑いがあります。遺伝性の卵巣がんは、BRCA1/2という遺伝子の異常によって生じ、組織型としては、主に高異型度漿液性がんが生じます。そのような遺伝子の異常を前もって分かっていれば、卵巣がん・乳がんを予防するための手術や、乳がんを早期発見するための検診を受けることができます。心当たりがある場合はかかりつけの医師や遺伝カウンセラーに相談しましょう。
4)Casagrande JT, et al.: Lancet 2:170-173, 1979
卵巣がんの症状は?
自覚できる初期症状はほとんどありません。
症状が出てきたときには、がんが進行してしまっていることがほとんどです。
卵巣がんには、卵巣の腫れが大きくなくても、がん細胞がお腹の中に散らばってしまって腹水がたまってしまうタイプのものがあります。この場合、初期の自覚症状はなく、自分で感じられるほどの症状が出てきて受診をしたときには、がんが進行してしまっていることが多くあります。一方、卵巣が大きく腫れるものの、がん細胞がお腹の中には散らばりにくく早期で診断されるものもあります。それらの違いは、主には組織型(がんの顔つき)の違いによって生じます。組織型ごとの卵巣がんの特徴は、「がんの組織型ごとの特徴」をご覧ください。
卵巣が大きく腫れたり腹水がたまったりすると、お腹の張りを感じたり、洋服がきついために太ったと感じたりするといった症状があらわれます。そのほかにも、トイレが近くなった、下腹部にしこりがある、食べられない、息苦しい、などの症状もあります。気になる症状がある場合は、かかりつけの医師に相談してみましょう。