監修 近畿大学医学部 産科婦人科学 教授
松村 謙臣 先生
手術療法:腫瘍をできるだけ摘出します
卵巣と卵管、子宮、大網(お腹の臓器を覆う組織で、卵巣がんが最も転移しやすい)の全摘出が基本的な手術内容です。
腫瘍の性質やがんの広がり方によって、手術の内容が変わったり、手術前に薬物療法が追加されたりすることがあります。

まず、腫瘍がある側の卵巣と卵管をすべて摘出(付属器切除)し、摘出した腫瘍を手術中に検査する術中迅速病理組織検査を行って、良性/良性と悪性の中間/悪性を判定します。
良性
手術は終了し、治療完了となります。
良性と悪性の中間(境界悪性)
もう片方の卵巣と卵管、子宮、大網をすべて摘出し、お腹の中をさらに詳しく調べて終了です。術後の詳細な検査で悪性であると判断されれば、再度手術を行うことがあります。
悪性
卵巣・卵管、子宮、大網の全摘出とお腹の中の確認に加え、がんが転移しやすいお腹のリンパ節も摘出することもあります。摘出したリンパ節は術後に検査して、転移がないかどうかの確認が行われます。
最初の手術のときにすでにがんがお腹に散らばってしまっている場合は、完全にがんのない状態を目指して、できるだけすべてのがんを摘出するようにします。この手術を、特に「腫瘍減量術」と呼びます。
がんが非常に進行していて手術で摘出することが難しい場合は、手術前に抗がん剤治療を行う術前化学療法によって、がんを小さくしてから手術を行うことがあります。
手術の流れ

日本婦人科腫瘍学会編:患者さんとご家族のための子宮頸がん子宮体がん卵巣がん治療ガイドライン 第3版,
金原出版, 2023, p156より作図
進行卵巣がんに対する治療
ステージⅡ~Ⅳが該当します。
基本は手術療法+薬物療法ですが、がんが大きい場合は再度手術を行うこともあります。
進行卵巣がん(ステージⅡ~Ⅳ)の治療の流れ
初回手術後にステージⅡ、ⅢまたはⅣであることが確定すると、進行卵巣がんとしての治療が行われます。
目に見えるがんが残っていない場合、残ったがんの最大径が1cm未満である場合は、薬物療法後、経過観察で治療完了となります。
残ったがんの最大径が1cm以上の場合は、まず薬物療法を行い、その後にできるだけたくさんの腫瘍を摘出する腫瘍減量術を行います。腫瘍減量術の後にも再び薬物療法を行い、経過観察で治療完了となります。

日本婦人科腫瘍学会編:卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン 2020年版, 金原出版, 2020, p19より作成
通常、進行卵巣がんの手術は「がんを完全に切除できる」と判断された場合に行われるものです。しかし、卵巣がんでは、進行していて完全切除が目指せなくても、手術によってできるだけがんを取り除くようにします。初回手術後の対応は、残った腫瘍の量によって決定されます。
遠隔転移がある場合も、卵巣がんでは手術を行います。例えば肝臓に切除できそうな転移があれば、肝臓の専門医と相談して手術を実施します。