どんな治療をするの?

手術療法

監修 独立行政法人国立病院機構
四国がんセンター 婦人科 手術部長 
竹原 和宏 先生

手術療法:ほぼすべての子宮体がん患者さんは手術を行います

手術前の推定進行期によって詳細は異なりますが、子宮と卵巣・卵管の全摘出が基本的な手術内容です。

  • ※子宮や卵巣の位置については、こちらをご覧ください。

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手術前に推定される進行期は、手術後の進行期に準じます。しかし手術後と区別するために、推定進行期は「術前推定X期」と呼ばれています。
●術前推定Ⅰ期
がんが子宮体部に留まっている、と推定されます。この場合は子宮全体を摘出する単純子宮全摘出術と、卵巣・卵管を摘出する両側付属器摘出術を行うのが基本です。
これにプラスして、術後再発リスクに合わせてリンパ節を切除するか、膣の一部まで範囲を広げて摘出する準広汎子宮全摘出術を行うか、などを決定します。手術後は経過観察となり、通院しながら再発予防と早期発見につとめます。

子宮の構造をもとに単純子宮全摘出術と準広汎子宮全摘出術の基本的な切除範囲と卵巣を温存する場合の切除部分を説明したイラスト
  • 日本婦人科腫瘍学会編:患者さんとご家族のための子宮頸がん子宮体がん卵巣がん治療ガイドライン 第3版,金原出版,2023,p.87

●術前推定Ⅱ期
がんが子宮頸部の間質にまで及んでいる状態です。術前推定Ⅱ期はがんの状態を正確に判断することが難しいため、Ⅰ期とは異なり基本の術式は定められていません。各病院によって、がんの広がり方などによって適用する術式を選択しています。子宮頸部の間質にまでがんが広がっていることが明らかな場合は、準広汎子宮全摘出術または広汎子宮全摘出術が考慮されます。術前推定Ⅱ期も、術後は再発リスクに合わせて追加治療を行います。

子宮の構造をもとに広汎子宮全摘出術の基本的な切除範囲と卵巣を温存する場合の切除部分を説明したイラスト
  • 日本婦人科腫瘍学会編:患者さんとご家族のための子宮頸がん子宮体がん卵巣がん治療ガイドライン 第3版,金原出版,2023,p.87

●術前推定Ⅲ期
術前推定Ⅲ期は、がんが子宮をこえて広がり始めている状態で、手術に耐えられる状態であれば、全例で子宮と卵巣・卵管の摘出を行い、状態に合わせて大網(お腹の臓器を覆う組織)やお腹のリンパ節までを摘出します。術後は再発リスクに合わせて、追加の治療を行います。

●術前推定Ⅳ期
術前推定Ⅳ期は膀胱、直腸にがんが直接浸潤している、または、遠隔の臓器にまで転移し始めている状態で、子宮摘出が可能な状態であれば、基本の手術に加えて転移したがんをできるだけ摘出します。術後は再発リスクに合わせて、追加の治療や症状緩和のためのケアを行います。

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上記で紹介した手術は、子宮体がんに対して子宮や卵巣を摘出するためのものです。それ以外に、子宮内膜全面掻爬という処置が行われることがあります。これは、麻酔をかけた状態で、子宮体部全面の子宮内膜を採取するものです。
子宮内膜全面掻爬は、組織診で子宮内膜異型増殖症と診断された患者さんに対して、子宮体部のどこかにがんがないかを明確にする目的で行われます。
また将来の妊娠・出産を希望する患者さんに対して、子宮を摘出しない高用量プロゲステロン療法での治療が可能かどうかを確認するためにも実施されます。詳しくは、将来の妊娠・出産を希望する患者さんへの治療もご覧ください。

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進行子宮体がんに対する治療

ステージⅢ・Ⅳが該当します。
手術可能であれば子宮及び卵巣・卵管と転移がんをなるべく多く摘出し、術後は薬物療法や放射線治療を行います。

進行子宮体がん(ステージⅢ・Ⅳ)の治療の流れ
ⅢまたはⅣ期で、腹腔内やリンパ節あるいは肺などの遠隔転移など子宮外にがんがある場合の治療の流れを解説
  • 日本婦人科腫瘍学会編:患者さんとご家族のための子宮頸がん子宮体がん卵巣がん
    治療ガイドライン 第3版,金原出版,2023,p.109を参考に作成

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進行して転移がみられる状態でも、なるべく手術で腫瘍を摘出し、体に残ってしまった場合は追加の治療を行う、というのが子宮体がん治療の基本です。
手術ができない患者さんとは、高齢や合併症などで手術に耐える体力のない患者さん、手術を望まない患者さん、また手術を行っても十分な腫瘍減量が望めない病状の患者さんなどです。

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専門医からのメッセージ

子宮体がんは放射線治療が効きづらいとされており1)、また抗がん剤単独での標準治療が確立していないことから、手術療法が非常に重要です。子宮の全摘出と両方の卵巣・卵管の摘出はほぼ避けることができないため、不安になる方も多いことでしょう。
しかしこの方法が、多くの臨床試験などを経て予後の改善に効果的であると検証されています1)。不安や疑問点は医療スタッフによく確認しつつ、手術に臨んでいただきたいと思います。
なお、将来妊娠を希望される患者さんの場合は、いくつかの条件を満たせば、子宮・卵巣を残す方法を検討することもできます。しかし、病状をよく理解して定期的な経過観察や、場合によっては不妊治療が必要になりますので、治療法を決める際には、医療スタッフやご家族とよく話し合いましょう。

  1. 1)日本婦人科腫瘍学会編:子宮体がん治療ガイドライン2023年版,金原出版,2023,p.58

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