慢性骨髄性白血病の治療法

監修:愛知医科大学 血液内科 教授 高見 昭良 先生

Q慢性骨髄性白血病(CML)の治療は、どのようなものですか?

A治療方法は、慢性骨髄性白血病(CML)の病期(慢性期、移行期、急性転化期)により異なります。慢性期の場合、TKI(チロシンキナーゼ阻害薬)と呼ばれる分子標的薬による治療が考慮されます。ただし、副作用でTKIが続けられない、あるいは効果不十分の場合、使用するTKIの種類を変更することになります。一方、病期が進行して移行期・急性転化期に入ると、慢性期と同じ治療では通常不十分です。特に、急性期では、フィラデルフィア染色体BCR-ABL融合遺伝子)陽性急性リンパ性白血病と同様に、抗がん剤と分子治療薬の併用療法の適応となり、さらに造血幹細胞移植の実施も考慮されます。
詳しい情報は国立がん研究センター がん情報サービスのサイト(別ウィンドウで開きます)もご覧ください([2020年9月15日閲覧])。

薬物療法は、白血病を含むがんを治す、進行を抑える、または、がんによる身体症状を緩和することを目的としています。がんの薬物治療に使われる薬剤には多くの種類がありますが、白血病治療では、主に抗がん剤分子標的薬といった種類の薬剤が使われます。どの薬剤を、どうやって使うかは白血病の種類によって異なりますが、急性白血病治療では、複数の抗がん剤をいっぺんに使う多剤併用療法という強力な治療が行われたり、慢性白血病治療では、白血病の進行を確認しながら、症状があらわれないように抗がん剤分子標的薬を使ってコントロールしたりします。慢性骨髄性白血病では、慢性期にTKI(チロシンキナーゼ阻害薬)と呼ばれる分子標的薬で、症状をコントロールします。

放射線は細胞のDNAに傷をつけることから、がんの病巣にあてることで、がん細胞を死滅させる効果をもっています。放射線治療は、がんを治すことや症状を緩和することを目的に使われます。白血病治療では、造血幹細胞移植前に使用されることもあります。

造血幹細胞移植は、白血病を含む血液がんなどの治癒を目的として行われます。強い副作用や合併症があらわれる場合があるため、その実施に関しては、個々の患者さんの状況をよく確認し、慎重に検討します。
造血幹細胞移植では、強力な化学療法や全身への放射線照射などを移植前に行って白血病細胞を減らし、自分またはドナーの骨髄末梢血臍帯血から事前に採取した造血幹細胞を移植します。移植前の処置によって、患者さんの免疫のはたらきも抑えるため、移植された造血幹細胞が患者さんの骨髄で正常にはたらくことが期待できます。また、ドナーから提供された造血幹細胞を移植する同種造血幹細胞移植の場合は、移植されたドナーのリンパ球が患者さんの体内に残っている腫瘍細胞を攻撃する効果(移植片対白血病効果:GVL効果)も期待できます。患者さん自身の細胞を移植する場合を自家造血幹細胞移植、他人の細胞を移植する場合を同種造血幹細胞移植といいます。慢性骨髄性白血病の治療には、同種造血幹細胞移植が多く用いられています。

後述の自家造血幹細胞移植と同種造血幹細胞移植をイラストで解説
永井正. 図解でわかる 白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫, 2016, p173 法研

自家造血幹細胞移植は、患者さんの末梢血から造血幹細胞を採取しておき、化学療法や放射線療法による強力な治療を行って白血病細胞を減らした後に体内に戻す方法です。白血病細胞と一緒に正常な血液産生も妨げられますが、患者さん自身の造血幹細胞を戻すことで血液産生の回復を促進します。
同種造血幹細胞移植は、強力な治療で白血病細胞を減らし、患者さんの免疫細胞を抑えた後、白血球の型であるHLAが患者さんと一致した他人(ドナー)から採取した造血幹細胞を患者さんの体内に移す方法です。血液産生の回復のほか、ドナーの細胞が患者さんの体内の白血病細胞を攻撃する作用が期待されます。

医師からのメッセージ

治療法の確認ポイント

医師から説明された治療法の情報は、効果だけではなく副作用などの欠点も含めて、整理しておきましょう。説明された内容を紙に書き出してみると、情報を整理しやすく、理解した内容と不明点が確認できます。不明な点は医師に確認し、十分に納得してから治療を始めるようにしましょう。

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