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リンパ腫とは?
治療法など基礎知識

監修 愛知県がんセンター 病院長 
山本 一仁 先生

リンパ腫とは

リンパ腫は血液のがんの1つで、リンパ系組織から発生するほかに、リンパ外臓器からも発生します。リンパ腫の患者さんは、年間で10万人に10人程度の割合1)で報告されています。
リンパ腫は、正確な診断に基づいて、適切な治療を行うことで、その種類によっては根治を目指せる可能性のある病気です。

  1. 1) 国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」(全国がん登録)

「リンパ腫ってどんな病気?」ページへ

リンパ腫の症状

リンパ腫の初期には、リンパ節の多い部分で、痛みのないしこりがみられます。このしこりが、数週から数カ月にわたって大きくなり続け、リンパ腫が広がって病状が進むと、さまざまな全身的な症状があらわれるようになります。とくに、原因不明の発熱や体重減少、ひどい寝汗の3つの症状はB症状と呼ばれ、代表的な症状として知られています。
また、リンパ腫がほかの臓器や器官に広がると、広がった先によって異なる、特有の症状がみられるようになります。

「リンパ腫の症状」ページへ

リンパ腫の病期(ステージ)

リンパ腫の進行は、その程度によって、Ⅰ期、Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳ期の4つの病期(ステージ)として分類されます。
病期に基づいて治療法を選択したり、予後を予測したりするため、検査によって病期を正確に判断することが重要になります。
病期ごとの特徴は以下の通りです2)

I期 一つのリンパ節領域(たとえば頸部や鼠径部など)、またはリンパ組織(扁桃腺、脾臓、胸腺など)に病変がとどまっている場合。リンパ節、リンパ組織以外の臓器の限局的なリンパ腫の病変もⅠ期とされます。
Ⅱ期 横隔膜を境界として、その上または下いずれか一方に限局した二つ以上のリンパ節領域、リンパ組織の病変。
Ⅲ期 横隔膜の両側に及ぶリンパ節領域またはリンパ組織の病変。
Ⅳ期 広範なリンパ節以外の臓器への浸潤。たとえば、骨髄、肝臓などの臓器に病変がある場合はⅣ期とされます。
  1. 2) Carbone PP, et al. Cancer Res. 1971 ; 31(11): 1860-1.

リンパ腫の種類

リンパ腫の種類には、大きく分類して「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」があります。ホジキンリンパ腫には、「ホジキン細胞」などの特徴的な細胞がみられ、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫と、古典的ホジキンリンパ腫に大別されます。
非ホジキンリンパ腫は、ホジキン細胞などの特徴的な組織像を持たないリンパ腫すべてを指します。リンパ球のうち、どの細胞ががん化したのかによって、B細胞性、T細胞性、NK細胞性に分類されます。

また、非ホジキンリンパ腫は病気の進行の早さや症状の激しさ(悪性度)によって3つに分類されています。それぞれの特徴は以下の通りです。

低悪性度リンパ腫:
年単位でゆっくりと進行します。腫瘍量が少ない場合には、経過観察とすることもあります。

B細胞性 T細胞性
  • 慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫
  • リンパ形質細胞性リンパ腫
  • 脾辺縁帯リンパ腫
  • 粘膜関連リンパ組織型節外性辺縁帯リンパ腫(MALTリンパ腫)
  • 節性辺縁帯リンパ腫
  • 濾胞性リンパ腫
  • マントル細胞リンパ腫
  • T細胞大型顆粒リンパ球性白血病
  • 成人T細胞白血病/リンパ腫(くすぶり型,慢性型の一部)
  • 菌状息肉症/セザリー症候群
  • 原発性皮膚未分化大細胞型リンパ腫

日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版 第Ⅱ章リンパ腫, 金原出版, 2023, p209-213を参考に作成

中悪性度リンパ腫:
週~月単位で進行します。診断された時点で治療が必要になります。

B細胞性 T細胞性
  • びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
  • 末梢性T細胞リンパ腫・非特定型
  • 腸症関連T細胞リンパ腫
  • 未分化大細胞リンパ腫
  • 肝脾T細胞リンパ腫
  • 成人T細胞白血病/リンパ腫(急性型,リンパ腫型,慢性型の一部)
  • 節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型
  • 血管免疫芽球性T細胞リンパ腫

日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版 第Ⅱ章リンパ腫, 金原出版, 2023, p209-213を参考に作成

高悪性度リンパ腫:
日~週単位で進行します。入院を必要とする、強力な治療が必要になります。

B細胞性 T細胞性
  • バーキットリンパ腫/白血病
  • 急速進行性NK細胞白血病

日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版 第Ⅱ章リンパ腫, 金原出版, 2023, p209-213を参考に作成

「リンパ腫の種類と分類」ページへ

リンパ腫の治療法

リンパ腫の治療は、薬物療法、放射線療法、造血幹細胞移植などが主な治療となります。これらの治療法の中から、リンパ腫の種類、病期、予後予測の結果、患者さんの希望やライフスタイルなどに合わせて、最も適切な治療を選びます。そのため、リンパ腫の種類によって、治療方針は異なります。場合によっては、経過観察を行うこともあります。

抗がん剤(化学療法)

薬物療法は、リンパ腫を含むがんを治す、進行を抑える、または、がんによる身体症状を緩和することを目的としています。がんの薬物治療に使われる薬剤には多くの種類がありますが、リンパ腫治療では、主に抗がん剤や分子標的薬が使われます。薬剤の種類や組み合わせはリンパ腫の種類によって異なり、発現する副作用も使用する薬剤によって異なります。

放射線療法

放射線は細胞のDNAに傷をつけることから、がんの病巣にあて、がん細胞を攻撃して治療します。放射線治療は、がんを治すことや症状を緩和することを目的に使われます。リンパ腫治療では、造血幹細胞移植前に使用されることもあります。

造血幹細胞移植

骨髄、末梢血、臍帯血のいずれかから血液細胞のもとになる造血幹細胞を取り出し、患者さんに移植する方法です。自家造血幹細胞移植は患者さん自身の細胞を移植し、同種造血幹細胞移植では他人の細胞を移植します。リンパ腫の病型によって、実施するタイミングは異なります。

手術療法

他の多くのがんでは、手術療法は治療の大きな柱になっていますが、リンパ腫の治療において手術が必要なケースは、限られています。(例:B細胞リンパ腫が胃や小腸にできたときなど)

無治療経過観察

低悪性度に分類される進行がゆっくりしているリンパ腫で、リンパ腫細胞の量が少ない場合などは、治療をせずに経過観察を行うことがあります。

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どうやって治療法を選ぶか

リンパ腫は、病型や病期、全身状態などによって治療方針が決定されます。医師の説明をきちんと受け止め、治療法を整理・理解して、わからないことは質問をして「納得できる治療法か」を検討することが重要です。そのために、事前に準備するポイントや、情報を整理するポイント、セカンドオピニオンの活用に関して知っておきましょう。

「どうやって治療法を選ぶか」ページへ

治療を受ける前に必要な準備

治療が始まるまで、焦りや不安を感じることもあると思いますが、できるだけいつもと同じように過ごして、治療に備えましょう。
全国にあるがん診療連携拠点病院のがん相談支援センターでは、がんの治療、療養生活についての情報探しの支援や相談を行っていますので活用を検討するのもよいでしょう。

「治療を受ける前に必要な準備」ページへ

リンパ腫の再発

リンパ腫では、再発した場合の8割以上で臨床症状があらわれることによって発見されています3, 4)。そのため、治療後のフォローアップが重要になります。
明確に決められたタイミングはありませんが、リンパ腫の種類によって、完全奏効が得られた場合、治療後の2年間は2~3カ月毎、その後は最低でも3~6カ月毎の追跡を3年間は行う、または治療後の1年間は2~3カ月毎、その後は3~6カ月毎の追跡が推奨されています5)

  1. 3) Weeks JC, et al. J Clin Oncol. 1991 ; 9(7): 1196-203.
  2. 4) Oh YK, et al. Radiology. 1999 ; 210(2): 483-6.
  3. 5) 日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版 第Ⅱ章リンパ腫, 金原出版, 2023, p221-222

「リンパ腫の再発と予後」ページへ

リンパ腫の患者数は?

リンパ腫の年間の患者数は、2019年に新たに診断された患者さんは36,638例(男性19,311例、女性17,325例)1)でした。
年齢別にみると、60歳前後から増加していき、70歳代後半でもっとも罹患数が多くなりました1)

リンパ腫の年齢別罹患数(2019年)
  1. 1) 国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」(全国がん登録)

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リンパ腫の年齢別罹患数(2017年)